タマちゃんのお部屋
猫ってなぁに?
猫の歴史
 犬は人間が家畜化したのに対し、猫たちは自ら人間に近づき、自らを家畜化していったと言われています。古代エジプトかそれ以前のメソポタミアで、アフリカ産のリビアヤマネコが人間と共生し始め、徐々に家畜化されました。古代エジプトでは猫信仰が盛んで、女神バステトは猫の頭部を持ち、出産や種族繁栄の神として崇められていました。
 家畜化された猫たちは、兵士や商人によって世界中に拡がりました。しかし、中世のヨーロッパでは、猫は不吉なもの、悪魔の化身、魔女の手下として忌み嫌われたこともあります。ヨーロッパで猫の人気が高まったのは19世紀に入ってから。1871年には世界初のキャットショーがロンドンで開催され、1887年には「ナショナル・キャット・クラブ」が設立されました。
猫の体
 猫の目のように‥‥と言われるように、猫の目は瞳が大きくなったり細くなったりします。これは猫の瞳孔が高度な働きをしている証拠。明るいところでは瞳孔は細く、暗いところでは少ない光を充分に取り入れるため、大きく開きます。
 猫が夜でも物がよく見えるのは、網膜の裏側に「タペタム」という反射層があるため。目に入った光を効率よく網膜に吸収させ、その光を全て反射することができるのです。暗闇で猫の目が光るのはこのタペタムのせい。猫の網膜は人間よりずっと敏感で、人間の5倍は明るく見えています。 しかも、猫の全体視野は280度。正面を向いていても、斜め後ろまで見えています。立体視野は130度。人間は120度ですから、やはり少し広いです。
 しかし、視力となると人間の10分の1。自分からの距離が2〜6メートル以内の物しかはっきり見えていません。それ以上近すぎても遠すぎてもよく見えていないわけです。しかし、動体視力はバツグンで、動くものには敏感に反応します。猫は白と黒しか見えていないといわれていましたが、最近の研究では緑と青を感じる錐状体があるのが確認されたということです。
 猫は哺乳類の中ではバツグンの聴力の持ち主です。猫の耳は180度の方向転換ができます。そのため、音の方向を確実にキャッチできるのです。人間の聴力の1オクターブも高い65キロヘルツ以上の音も聞き取ることができます。なので、掃除機やドライヤーの音は苦手だし、猫缶を開ける音や、鰹節の袋を取り出す音は聞き逃しません。
 また、猫が高い場所から上手に飛び降りることができるのは、耳の中の非常に発達した三半規管によって、優れた平衡感覚を持っているからなのです。
 猫の鼻をよく見ると、細かい模様が入っています。これは全ての個体によって違います。鼻の皮膚には皮脂腺や汗腺がありません。鼻の頭が湿っているのは、鼻の皮膚をガードする鼻粘膜からの分泌物のためです。鼻は非常に敏感で、0.5度の温度差も感じることができます。
 猫は犬ほどではありませんが、匂いには敏感です。匂いの記憶は一生消えません。新しいものを見つけると、まず匂いの情報を収集するためにクンクン嗅ぎまわります。目の前に指を出されると、クンクンせずにはいられないんです。ごはんを食べるかやめるかも匂いで判断します。
 また、猫は口と舌でも匂いを嗅ぐことができます。ときどき猫がクンクンしながら口を開けて“笑って”いますが、あれは「フレーメン反応」といって、上顎にある「ヤコブセン器官」という匂いを感じる器官に匂いの分子を送り込んでいるのです。特に異性の匂いやマタタビの匂いを嗅いだ時などにフレーメン反応が起きるようです。やはり“嬉しい”のでしょう。
 猫が味わうことのできる味覚は、辛味、酸味、苦味、甘味。味にうるさい美食家が多いといわれる猫ですが、実は味を感じる「味蕾」の数は少なく、食べ物の選択はほとんど匂いに頼っています。でも、刺激にはとても敏感なので、香辛料は禁物。
 「猫舌」などといわれ、熱い物は食べられない代表のように思われていますが、熱い物を食べる動物は地球上で人間だけ。それも子どものころから慣らした結果であって、動物は普通みんな「猫舌」なんです。なので、肉食である猫に最適のごはんの温度は、小動物の体温程度の33〜40度ということです。
 猫に顔を舐められて痛い思いをすることがありますが、猫の舌には「乳頭」と呼ばれる爪のような形をした突起があるからです。これによって、食べ物を落とさず口の中へ運ぶことができ、肉を骨からそぎ落とし、体についたゴミや抜け毛を掃除することができるのです。
 猫の歯は、上下合わせて30本。切歯は犬歯の前に上下6本ずつ。犬歯は上下合わせて4本。前臼歯は上6本、下4本。後臼歯は上下2本ずつです。
ヒゲ
 ヒゲは目の上、顎、口の周り、顎の下に数本ずつ生えています。このヒゲは胎児の被毛が生える前から生えています。ヒゲの毛根は、神経の束が集まっている液体の入った袋になっていて、視神経と同じ経路で脳に情報を送ります。
 ヒゲは、障害物との距離を測ったり、体のバランスをとったり、獲物を捕まえるために重要な役割をしているといわれていますが、まだわからないことも多く、研究中です。何の役にも立たないものが、あんなに堂々と生えているはずはないですよね。目の上に生えているヒゲは人間のまつげと同じように、虫やゴミなどが目に入らないように、瞬きをさせる役目をしています。
肉球
 鼻や肉球など、毛の生えていない部分は皮膚が厚く、厚いわりには敏感で器用です。肉球を覆っている皮膚は1.2ミリもあり、分厚くて頑丈。猫が音も立てず忍び寄ることができるは、この肉球クッションのおかげ。ネコパンチを繰り出すグローブの役割もしています。しかも、ちょっと物に触れただけで、形や感触を確かめることができ、微妙な震動で飼い主さんの足音も聞き分け(?)ます。
 手根骨にある肉球は、唯一汗腺のある場所で、動物病院で診察台に乗せられ、緊張して汗をビッショリかいている猫もいます。まさに手に汗ジワ〜の状態ですね。
被毛
 毛は「毛のう」というくぼみから生えています。毛の密度はお腹のほうが濃く、背中はお腹の半分くらい。保護毛と二次毛の2種類があって、保護毛は1つの毛のうから1本ずつ、二次毛は1つの毛のうに数本まとまって生えています。
 毛の伸びる速さは1週間で2ミリくらい。毛のうの成長期を過ぎると、伸び方もだんだん遅くなり、やがて止まります。成長の止まった毛の毛根は、すでに組織から分離しています。古い毛の下から新しい毛が生えてきて、古い毛は押し出されて抜けるわけです。お掃除はまめにしましょうね。
猫の体の大きさ
 犬の体の大きさは、体重80キロのセントバーナードからたった2キロのチワワまで、バリエーションが豊富です。しかし、猫はだいたい同じくらいの大きさですね。なぜでしょう? 一説では、人間と付き合ってきた長さの違いといわれます。犬の1万2千〜4千年に比べ、猫は4〜6千年。猫は犬の3分の1くらいなのです。
 しかし、それだけではないような気がします。犬は人間との関わりにおいて、狩猟犬や牧羊犬、軍用犬、闘犬、愛玩犬など、いろいろな目的を持って改良され、それぞれの役割を果たしてきました。猫はというと‥‥、せいぜいネズミを捕るとか、後は「一緒にいると気が休まる」‥‥ということぐらいですね。世界中どこに行っても、猫たちは同じような暮らしぶりです。
 しかも、猫を飼っている人ならおわかりでしょうが、猫たちの体が大きくなったら、これはもうペットとは言えず、「猛獣」でしょう。「ヒョウ」とか「トラ」と変わらない動物となってしまいます。猫はこれぐらいの大きさが、だっこするにもちょうど良く、存在の目的に合っている‥‥といえるのでしょう。
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猫の習性
夜中の運動会
 猫は夜行性といわれていますが、夜中ずっと活動しているわけではありません。猫が活動するのは主に夕方と明け方。それまでおとなしく寝ていた猫が、突然猛ダッシュを始めたりします。これは夕方と明け方が獲物を得やすかった狩猟生活の名残です。猫は犬のように飼い主さんの生活のペースに左右されることなく、体内時計によって生活しています。マイペースというか、太古から組み込まれた自然のリズムに従って、規則正しく生活しているわけですね。
孤独なハンター
 たとえ飼い猫であろうと、狩りの仕方は野生のままです。物陰に身を潜め、じわじわと音もなく忍び寄り、ある程度の近さまで近づいたらしばし待ち伏せ、チャンスを逃さず跳びかかる。しかし、飼い猫の場合は、狩りと食事が一致していません。わざとちょっと放してまた捕まえたり、獲物を半殺しのまま放置してしまうことも‥‥。
 また、捕まえたネズミなどを、自慢げにくわえて帰ってきます。メスの場合は子猫に食事を運んで来る習性。オスは狩りを一緒に楽しみたいから。油断していると、本棚の裏に何やら“宝物”がいっぱいだったりしますよ〜。
縄張り(テリトリー)
 猫には大きく分けて「ホームテリトリー」と「ハンティングテリトリー」の2種類のテリトリーがあるようです。ホームテリトリーは自分の家。複数飼いの場合、家の中の押入の中やテレビの上だったりもします。ハンティングテリトリーは個体差もありますが、だいたい家の周辺で、直径200〜500メートルくらい。一日に2、3回は必ずテリトリーのパトロールに出かけます。ただブラブラしているように見えますが、彼らは真剣です。立ったままオシッコをかけたりするのは「スプレー」といって、テリトリーを主張する行為です。
ウンチを埋める
 猫がウンチを埋めるのは、きれい好きだからというわけではないんです。外敵から身を守るため、または、エサとなる小動物に気づかれないように、痕跡を消すために埋めていた名残なのです。他の猫の通り道にこれ見よがしにウンチをしたりするのは、いわゆる挑戦状。わざと埋めずに存在を主張しているわけです。
夜の集会
 もともと猫は群を作る習性はないのですが、人間との生活や都会での狭いテリトリーを分け合うことで、多少の社会性らしきものができてきているようです。野良たちの中には、ボス猫を中心としたハーレム的集団生活をしているものもいます。仲間の猫が赤ちゃんを産めば、メス猫たちが交代でベビーシッターをやったりも。仲の良いグループは夜中に“集会”を開きます。何を話し合っているのか知る由もありませんが、この集会によってグループ内のコミュニケーションを図っているのは確かです。
グルーミング
 猫は起きている間、暇さえあればペロペロと毛を舐めているようですね。もちろん、被毛をきれいにしておくということもあるのですが、他にもいろいろ理由があります。猫の毛の根元には皮脂腺があって、舐めることで皮脂を全身に広げ、断熱、防水効果を高めています。その上、皮脂は日光に当たるとビタミンDを作り、毛を舐めることで栄養補給もできるわけです。
 もう一つは体温の調節。暑い時は体を舐め、唾液が蒸発する気化熱で体温を下げ、寒い時は毛並みを整えることで、毛の間に空気がたまりやすくし、体温を逃がさないようにしているのです。
 また、グルーミングには自分をリラックスさせる効果もあります。叱られたときや獲物に逃げられた時、夢中で遊んでいる最中や、なんと、ケンカの最中でも唐突にペロペロし始めたり。これは「転位行動」といわれるもので、動揺したり、興奮したりした時、気分をリラックスさせようとしているのです。人の話をぜんぜん聞いてない‥‥というわけではないんです。
寝る
 猫って、いつ見てもたいてい寝ているような気がします。一日、15時間以上は寝ています。肉食の猫たちは草食動物と違い、必要なエネルギーさえ摂ってしまえば、あとは寝て過ごし、無用なエネルギーの消費をおさえているわけです。雨の日は特に眠い。エサとなる小動物もあまり活動しないので、狩りの成果もあまり得られない、なので寝る‥‥という本能なのです。
 猫も夢を見ます。猫の深い睡眠(REM睡眠)の時間は約4時間。この間に猫は夢を見ています。猫に聞いても教えてくれませんが、たぶん“おいしい”夢。この時間に寝ているイスから落ちたりすると、何事が起こったのか理解できず、しばらく呆然としていたりします。
吐く
 初めて猫を飼われるかたは、仰天してしまわれることも多いと思いますが、猫はよく吐きます。病気というわけではなく、健康な猫でも、様々な理由で吐くことがあるのです。まず、お腹に溜まった毛を吐き出すため、草を食べたりしてわざと吐きます。後は、急いでガツガツたべたフードがお腹の中で膨張したり、「吐けば飼い主が起きてくれるから」という理由だったりも。ごはんを食べている途中で突然吐き、またすぐに食べ始めることもあります。
 吐いてもケロッとして、元気や食欲もあるなら、そんなに心配はいらないでしょう。大事なものの上に吐かれてないかを心配したほうがいいかもしれません。ただ、何回も吐くとか、元気がない、食欲がない、下痢をしているなどの症状が見られたら、病気の可能性があります。また、寄生虫や異物がないか、吐いたものをよく観察して下さい。
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猫の言葉
 猫ってボキャブラリーが豊富。ずっと一緒に暮らしていると、だいたい何を言っているのかわかります。しかも鳴き声にもそれぞれ個性があっておもしろいですね。人間と一緒に暮らす猫は、ニャ〜ニャ〜と鳴いて、人間にいろんなことを要求してきます。
 しかし、野良猫さんや野生の猫たちは、オトナになるとほとんど鳴きません。彼らは普段、単独で生活しているため、繁殖期やケンカの時以外は鳴き声でコミュニケーションする必要がないのです。飼い猫にとってはいつまでたっても飼い主はお母さんであり、親離れしてないってことですね。
 猫は鳴き声だけではなく、様々なボディーランゲージも持っています。これらの言葉を理解して、猫に好かれる人間になりましょう。
ゴロゴログルグル
 猫がのどをゴロゴログルグル鳴らすのは、リラックスした気持ちを伝えるメッセージ。もともと母猫に対して子猫が発する「ボクは大丈夫だよ」っていう合図だったといわれます。いいこいいこしてあげると、たいてい目を細めてゴロゴログルグル言ってますね。ごはんをもらう時やだっこして欲しい時なども、それを期待しただけでゴロゴロ言っていたり。
 しかし、時には動物病院の診察台の上でゴロゴロ言ったりもします。これは獣医さんに対して「やさしくしてね」とでも言っているのでしょうか。猫は自分が苦しい時にも、飼い主さんに対してゴロゴロとのどを鳴らすそうです。誰でも知っている猫のゴロゴログルグルですが、実は未だにどこでこの音を出しているのかわかっていません。
もみもみ
 猫自身はどう思っているのか知りませんが、突然人の上に乗って来て、お腹や胸の上で足踏みを始めます。これは、子猫が母猫のオッパイをヨイショヨイショと押して飲む、その行為の名残なのです。「お母さんのそばにいるような気持ち」なのでしょう。毛布やクッションでやることもあります。いくら押してもオッパイはでませんが‥‥。
ペロペロ
 猫をだっこしていると、手や顔をペロペロ舐めてくれます。これは、子猫時代に兄妹で毛繕いをした幸せ気分が蘇っているのです。「痛い」といって拒絶したりしてはいけません。こちらもなでなでして、お返しをしてあげましょう。感謝の気持ちを表していることもあります。また、何かこれから自分がすることに許可を求めている時にもペロペロするので、そんな時には要注意!
スリスリ
 食事の用意をしていると、猫はしっぽをピンと立てて、足にスリスリしてきます。ピンと立てたしっぽは友好のしるし。子猫の時に母猫にお尻を舐めてもらった名残です。頭や脇腹をすり寄せるのは、食べ物をねだる仕草です。
 しかし、このスリスリは、ただ甘えているだけではありません。猫は自分のお気に入りの場所や物にもスリスリします。これはいわゆる「マーキング」といって、縄張りに自分の臭いをすりつけているのです、‥‥飼い主であるあなたにも。そうして「これは自分のものである」と主張しているわけです。
 足元にゴロンところがったり、お腹を見せてゴロンゴロンしている時は、遊んで欲しい時です。猫が遊んで欲しいと言っているのに、「今、忙しいから後で」などと言うのは、猫の飼い主として正しい態度ではありません。必ず遊んであげましょう。
しっぽでおしゃべり
 日本猫はしっぽの短い猫も多く、わかりにくいこともあるのですが、猫のしっぽはおしゃべりです。しっぽをピンと立てるのは甘えているしるし。ゆっくりと大きく振るのはリラックス。小さく振るのは不安。先っぽだけピクピクしている時は心ここにあらず、何かに気を取られている時です。パタパタ早く動かす時は怒っている時。体の下に巻き込む形は恐怖を感じている証拠。タヌキのように膨らんでいるのはびっくりしたり動揺している時です。
誰が一番強いの?
 ケンカの時の仕草でその猫の強さがわかります。自信満々の猫は耳をそらし、瞳孔は細くスリット状。ヒゲは前方に逆立ち、しっぽは低く左右に振ります。体の毛は寝たまま、低くうなります。
 弱い猫が降参する時は、できるだけ体を低くして、小さく見せるようにします。耳もヒゲもピッタリ寝かせ、瞳孔は開いてまん丸に。視線をそらしたり目をつむって、しっぽは体の下に巻き込みます。
 中位の猫は、攻撃と防衛と恐怖が一緒くたになって現れています。相手に対して横向きになり、背中を弓なりに丸め、体中の毛は逆立ち、しっぽは膨らんで逆U字型。瞳孔は開き、耳を寝かせ、「シャーッ」っという声をあげます。時に、前足は恐怖で後ずさり、後足は攻撃態勢で前進‥‥で、ななめ横っ飛びになってしまうことも。
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
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