タマちゃんのお部屋
家出猫の探し方
監修:「アイペット探偵局」白澤実
 「うちの子にかぎって‥‥」なんて考えないで下さい。今夜、あなたの猫が家出をてしまうかもしれません。絶望に打ちひしがれている場合ではありません。あなたの探し方次第では、無事戻ってくるかもしれないのですから。
まずやるべきこと
 室内飼いの猫さんが、うっかりドアや窓から外に出てしまった時、飼い主さんはどうしたらいいでしょう? 自由外出猫さんが、ある日帰ってこなくなってしまったら・・。
 いなくなったと気づいたらすぐに探すことが大事なのは言うまでもありませんが、忘れちゃいけないことは、警察や保健所への連絡と、周辺の動物病院への問い合わせ。猫を保護している人から連絡が入っているかもしれません。また、万が一、事故に遭っていたりした場合も考えて、区役所や市役所、清掃局にも連絡しておきましょう。
「保健所」
 ペットの失踪、または保護届けを受け付けます。猫の年齢、性別、種類、毛の色などの特徴を記帳し、保護してくれている人から連絡があれば、教えてもらえます。
「警察」
 遺失物として届けます。猫を拾って、とりあえず交番に届ける人がいる可能性もありますから、近所の交番に連絡しておきましょう。
「動物管理センター」
 各自治体により違いますが、怪我をしたり、病気の飼い主不明猫を保護して手当をしてくれます。収容には期限があり、その期間を過ぎてしまうと処分されてしまいますから、まめに連絡して下さい。
「区役所・市役所・清掃局」
 猫が区道や市道で交通事故死した場合、連絡があれば役所の土木課と清掃事務所で遺体を回収します。(区によっては業者が代行して行っているケースもあります。)ほとんどの場合、日時や場所の記録だけしかありませんが、それを手がかりとして事故現場の近所の人などに聞いてみるなど、自分で調べることができます。
なぜ帰ってこないの?
 猫が帰ってこなくなる理由は様々。外出先でどこかに閉じこめられた。発情期のメスの匂いを追いかけて遠出してしまった。ケンカで追いかけられて闇雲に逃げて道に迷った。引っ越したばかりで道がわからなくなった。家に新しい子猫などが来たため、不満が募って家出。飼い主に愛想を尽かした‥‥などなど。
 しかし、考えたくはないですが、交通事故や猫捕り、人間による虐待‥‥というケースもあります。猫捕りや虐待は犯罪ですから、見つけた時は警察に通報して下さい。また、宅配便などの荷台に入り込んだまま、どこまでも行ってしまった‥‥ということもあるらしいです。
 いなくなったと気づいたらすぐに探しましょう。ただ泣きながら待っていてもダメです。早ければ早いほど、見つかる確率も高いのです。
このページのトップへ戻る
どこを探す?
 猫という生き物は、安心していられるテリトリーを作り、その中で暮らす動物なのです。室内飼いの猫さんにとって「外」は文字通りテリトリーの外ですから、とっても不安で不安でたまらないはず。室内飼いの猫が、何かの拍子に外に出てしまった場合、狭い所や物陰に潜んで、じっとしていることが考えられます。あまり遠くへ行くことは考えられず、メスなら家から半径30メートル、オスなら50メートル以内にいることがほとんどです。
 しかし、おびえているために声も出せず、動けなくなっています。人なつっこい猫でも3〜5日、臆病な猫なら7〜10日くらいはじっと隠れていて、人前には出てきません。近い場所から少しずつ範囲を広げ、一度や二度探して見つからなくても「いない」と決めつけず、何度も探してみて下さい。
 自由外出猫の場合は、避妊や去勢手術をした猫ならば、家から半径200メートルくらい、避妊や去勢手術をしていない猫でも約300〜500メートル以内が最大移動距離の目安です。猫がいつもいるような場所ばかりを探すのではなく、いつもは行かないような場所も探して下さい。
 猫の好きな場所は、公園、空き地、駐車場、細い路地など。狭い所が好きなので、倉庫やガレージ、物置、床下、天井裏、エレベーター、下駄箱などに閉じこめられていることもあります。植え込みや家と塀の間などの低い位置、ベランダや屋根の上、木の上など高い場所まで、目線を変えて隈無く探しましょう。探す時にはゆっくり歩き、ときどき立ち止まって猫の名前を呼び、かすかな声も聞き逃さないよう耳を澄ませて下さい。
 ただし、いくら猫のためとはいえ、他人の家の敷地には勝手に入らないで下さいね。それは「家宅不法侵入」です。必ず家の人に事情を説明して許可を得てから入って下さい。
いつ探す?
 24時間探しましょう。‥‥と言ってもそれは不可能です。なので、できるだけ効果的な時間を選びましょう。猫が一番活発に行動する時間は夕方と明け方。人通りが少なく、静かになった深夜から朝方が適しています。また、猫は習慣を大切にする動物なので、いつもごはんをあげていた時間も有効です。しかし、同じ時間にばかり探していたのではダメです。昼も探しましょう。とにかく探せる時にはいつでも探しましょう。
 探す時に用意しておくのは、猫が大好きなごはん、キャリーバッグ、バスタオル、懐中電灯。猫が薄暗い場所に潜んでいるかもしれませんから、昼でも懐中電灯は必要です。バスタオルは猫が暴れた時などにかぶせて保護します。また、猫の寝床の毛布やトイレの砂など匂いのついた物や、近所の人から聞き込みするための写真もあるといいですね。
ポスターを作る

 捜索と並行して、ポスターも作りましょう。A4(210×297mm)くらいの大きさが適当です。まず大きめの文字で「猫を探しています」等、タイトルを目立つように書きます。猫の名前、年齢、性別、種類、特徴などを明記し、猫の写真やイラストをできるだけ大きく、連絡先も大きめに。連絡先には住所は入れず、電話番号だけにしておきましょう。いなくなった場所や日時は入れないほうがよいこともあります。原稿ができたらコピーして使います。

 さて、ポスターが出来上がったら、それをどこに貼るかです。まず、できるだけ人目につく所。スーパーやコンビニ、美容院、郵便局、バス停や駅周辺などがそうです。お店の人や管理者にお願いしてみましょう。近くの小学校の入り口付近に、子どもの視点に合わせて低めにポスターを貼るのも、思わぬ情報が入ることがあります。また、怪我をした猫を誰かが保護し、治療のため動物病院へ行くかもしれません。しかも、動物病院へ来る人は、ほぼ動物好きな人たちですから、注意をして見てくれるでしょう。捜索エリア周辺の動物病院でもポスターの設置をお願いしてみましょう。
 電柱に貼る時は、剥がすことを考えて。むやみにベタベタ貼りまくるのは、反感をかったり、かえって見てくれなくなります。公園や駐車場などの猫が好きそうな場所の近くや学校の近く、住宅地の道沿い、ゴミ置き場のそばなどが効果的。貼る高さの基本は目線よりちょっと低めです(これが重要)。ただし、電柱は公共物ですから、そこに貼るのは本当は法律違反だということもお忘れなく。後日、必ずきれいに剥がしましょう。
 ポスターの他にチラシを作って、公園などで近所の人や子どもに直接渡してお願いするのもいいでしょう。捜索エリア内の家のポストに一枚ずつ入れていく方法もあります。チラシの場合にはポスターと違って住所や不明日を書き入れ、細かく猫の情報を伝えるようにすることが大切です。(ポスターが不特定多数の人に“見てもらう”ことが目的であるのに対し、チラシは特定の人に情報を“読んでもらう”“知ってもらう”ことが目的だからです。)
探しのプロにお願いする
 探してみたけどどうしても見つからない、探したいけど時間がないという人のために、ペットを探してくれる専門の業者さんもいます。ただし、怪しい業者も多く、金銭的なトラブルも多発していますから、事前に料金と仕事の内容、支払いの方法、見つからなかった場合のことなどを話し合い、口約束だけではなく、文書で残すようにして下さい。また、どんな捜索をしているのか報告書も出してもらいましょう。
 業者の仕事の内容が、自分たちでできるようなことだけならば、お金をはらって頼む意味がありません。人間的にも信頼することができ、プロとしてのノウハウを持った業者を選びましょう。
見つけた!‥‥で、どうする?
 必死の捜索でやっと猫を発見! でも、騒いではいけません。家出猫は精神的に不安定になっています。はやる心を抑えて、とにかく静かに行動しましょう。「見つけたぞー!」などと大声を出したり、追いかけたり駆け寄ったりするのは絶対にダメです。無理矢理連れ出そうとしたりしてはいけません、また逃げられます。こちらから猫に近づくのではなく、初対面の野良猫に接する時の感覚で、猫に来てもらうようなイメージで対応しましょう。
 まず腰を落とし、優しく猫の名前を呼びます。猫の匂いのする物や大好きなごはんを置き、猫が自分から出てくるまでひたすら待ちます。猫が近寄って来たら、鼻先に指を出して匂いを嗅がせます。差し出した指に猫が口元をこすりつけはじめたら、そっと体に触ってみて下さい。触らせてくれたらもう大丈夫。家にたどり着くまでは、バスタオルでくるんだり、キャリーバッグに入れて帰りましょう。くれぐれも再度逃走されたりしないよう慎重に。
 どうしても出てこない場合には、罠を仕掛けます。動物病院で相談されれば、捕獲用の檻を貸してもらえます。しかし、他の猫が入ってしまうこともあるので、充分な注意が必要です。
 うまく保護できたら連れて帰り、怪我をしていないか、元気や食欲はあるか、便や尿に異常はないかよく観察します。しばらくして猫が落ち着いたら、動物病院で健康診断をしてもらいましょう。
どうしても発見できないわけ
 どんなに探しても、猫が帰って来ない時の原因は、大きく分けて4つあります。まず、人間が原因の場合。盗難、猫捕り業者、猫マニア、変質者‥‥。他人の猫を勝手に捕獲したり、虐待を加えたりすることは完全に犯罪ですから、もし見つけたらすぐに警察に通報して下さい。
 そして、どこかに閉じこめられてしまった場合。倉庫やガレージ、床下、天井裏など、持ち主の人が気が付いてくれるか、捜索に協力してくれない限り、たとえそこにいるとわかっていても、救出することができないこともあります。
 また、事故などで死亡していた場合、遺体がすでに処分されてしまったり、発見者が勝手に処理してしまったりで、捜索しても全くわからないこともあります。即死ではなくても、猫は大怪我をした場合、とりあえず床下など人目につかない場所に入り込む習性があり、そのまま息絶えてしまい、遺体がみつかりにくいということもあります。
 4つめの原因として、偶然と故意による遠距離への移動ということがあります。猫嫌いの人によって遠くへ運ばれて捨てられるケースや、たまたま寝ていた車が走り出して運ばれてしまったケースもあります。
迷い猫にしないために
 猫を迷子にさせない確実な方法はひとつ、「絶対に家から出さない」ことです。しかし、室内飼いの猫でも、ちょっとしたスキに出て行ってしまうことだってあるのです。なので、自由外出猫はもちろん、室内飼いの猫であっても、迷子札を付けましょう。そして、繁殖させる目的がないのなら、オスは必ず去勢して下さい。発情期にメスを追いかけて遠出する心配がなくなります。
 また、日頃から猫の行動を知っておくことも大切。特徴のよくわかる写真も撮っておきましょう。そして、なによりも頼りになるのはご近所さんです。普段から近所付き合いは大切にしておいて下さい。
このページのトップへ戻る

イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『タマちゃんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
すべてのコンテンツの無断複写、転載を禁止いたします。Copyright PIG-D'S, All Rights Reserved.