タマちゃんのお部屋
飼い主の責任としつけ
 気ままな猫さんたちといえども、人間社会で生きていくためには、最低限のしつけは必要です。もちろん猫さんですから、「猫可愛がり」するのは当然。でも過保護にし過ぎはご近所さんとのトラブルの原因にもなりますし、結果的に猫のためにもよくありません。猫を可愛がるからには、責任を持って可愛がりましょう。
猫を叱る時
 叱るのはタイミングが大切です。現行犯でなければ、意味がありません。また、叱られて逃げる猫を追いつめないで下さい。猫はあなたに恐怖を感じてしまいます。その場で「ダメ!」と強い口調で言うか、手の平で猫の顔を覆ってプレッシャーをかける程度にして下さい。
 また、同じ事をしても、その日によって叱ったり叱らなかったりではいけません。一貫性を持って、ダメなものはダメと覚えるまで、根気よく繰り返します。叱る時には「ダメ!」とだけ言うようにして、猫の名前を呼ばないようにして下さい。「名前を呼ばれると嫌なことがある」と猫が覚えてしまうことがあるからです。「ダメ!」と言っても効かない時には、猫の嫌いな音を出すという方法もあります。
 猫は自ら起こした行動によって自分が嫌な思いをすれば、それを繰り返すことはありません。猫は肉球が汚れたり、触った感触が嫌な場所には乗りませんから、例えば乗って欲しくない場所に両面テープを貼っておいたりするのも効果的です。(貼れればですが。)
 おもちゃにされたり、爪とぎされたり、その上に吐かれたりなど絶対にされたくないものは、猫がそれをしにくい場所に移動したり、しまっておくことです。ただ悪さをしたと言って叱ることばかりを考えないで、飼い主の側の工夫と努力も忘れないで下さい。
 そして、決して体罰を与えたりしないことです。猫は不安になり、恐怖をいだき、情緒不安定になって、飼い主に対する不信感から、攻撃的になってしまうこともあります。しつけはあせらず、ヒステリックにならず、愛情を持って根気よくです。
トイレのしつけ
 猫が家にやってきたら、最初にしなくてはならないのがトイレのしつけ。自由外出の猫さんも、室内で快適にトイレを使ってもらいましょう。ウンチやオシッコは健康のバロメーターですし、ご近所さんとのトラブルも防げます。
 猫がトイレに行きたくなると、落ち着きがなくなってウロウロし始め、床の匂いを嗅ぎ回ったり床を引っ掻いたりします。そうなったらすぐにトイレに連れて行きます。上手にできたら、「よしよし」と誉めてあげて下さい。何度も繰り返すうちに、トイレを覚えます。
 トイレの場所も大切です。食事をする場所とは離してあげましょう。また排泄の時は、動物が非常に無防備な状態になる時です。しょっちゅう人が通ったり、誰かが見ていたり、明るすぎる場所では、猫も落ち着きません。静かでちょっと暗め、換気のしやすい場所が最適です。また、猫の寝床から遠すぎないことも重要。そして、汚れたトイレは匂いに敏感な猫にとっては最悪です。まめなお掃除は欠かせません。
 しかし、どんなに快適なトイレを用意しても、ストレスによって、トイレ以外の場所でしてしまうことがあります。そんな時は叱らないで、すぐにその場所をきれいに掃除して下さい。叱るとよけいにストレスを感じてしまい、ますます悪い状況になってしまいます。ストレスでもない場合は、泌尿器系や消化器系の病気も考えられます。
爪とぎ
 爪とぎは、猫の本質的な習性ですから、やめさせることはできません。猫が爪をといでいる時は、鼻歌でも歌い出しそうなくらい、とっても嬉しそうな顔をしています。爪をとぐ理由は、狩りのために文字通り“爪をといで”尖らせておく、テリトリーを主張する、ストレス解消、興奮を静める、爪をとぐと飼い主が起きる‥‥などがあります。しかし、これを放置すれば、部屋中すべての物で爪をとぐようになるでしょう。
 まず、猫が好きな爪とぎ器を与えて下さい。段ボール、カーペット、天然の木、麻など、様々な素材があります。猫が一番気に入った素材を選んで、それを複数用意して下さい。猫が爪をとぎたくたったらすぐにとげるよう、あっちこっちに設置します。置き方も工夫して下さい。床に置くだけじゃなく、猫が届く範囲で床からできるだけ高い位置に立てて設置するのも効果的です。
 まず、猫を爪とぎ器に誘導し、手をとって爪とぎのまねをさせます。また、他の場所で爪をとごうとしたら、すぐに爪とぎ器のところへ連れて行きます。マタタビを少しふりかけておくのも効果的。爪とぎ器で爪をといだら、よ〜く誉めてあげることも忘れないで下さいね。また、爪とぎ器は古くなったら取り替えて下さい。
 しかし、飼い主に注目して欲しくて爪とぎする場合は、爪とぎ器も役に立たないかもしれません。お気に入りの家具をボロボロにされる前に、かまってあげるしかないですね。
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食事
 猫は一度の食事でお腹いっぱい食べるコもいれば、小分けして何度も食べるコもいますから、一日何回食事をあげるかは、そのコのペースに合わせて回数を決めて下さい。また、猫は意外と(?)習慣を大事にする動物ですから、毎日同じ時間、同じ回数、同じ量を同じ場所で与えましょう。
 あげた食事を猫が食べてくれないからといって、猫が好きなものばかりをあげたりしないで下さい。栄養が偏ったり、偏食の原因になります。また、一日に必要なエネルギーを摂ってしまうと、猫は本来、それ以上食べないものですが、必要以上に好きなものを与えてしまうと、肥満の原因にもなります。具合が悪くて食欲がない場合は別ですが、食べなければ放っておき、悪くなる前にかたづけましょう。
 猫にとっても、人間の食事はいい匂いです。ついつい欲しくなっておねだりしてしまいます。が、猫に人間の食べ物は「毒」だと思って、絶対にあげないようにしましょう。人間の食べ物は、塩分や糖分が多く、猫の体にはよくありません。猫が食卓に上がろうとしたら、叱ってやめさせます。
咬む
 子猫の時期に親や兄弟と離れ、一匹だけで育った猫の中には、突然かみついてくるコがいます。軽く咬むのならまだいいのですが、手加減なしで思いっきり咬まれたら怪我をしてしまいます。子猫は親や兄弟姉妹とじゃれて遊ぶことで、咬むことの加減を知るのですが、その経験がないと、加減もわからないのです。ですから、子猫を一匹で育てなければならない場合は、飼い主さんが親兄弟に代わって遊んであげなければなりません。
 猫が咬みついたら、「痛い!」と叫んで下さい。それで咬むのをやめたらOK。それを繰り返すうちに、咬むのをやめるでしょう。それでもやめない場合は、咬まれた時に手を引いてはいけません。ますます強く咬んできます。逆に咬まれた手を猫のほうに押しやって下さい。手を放したら、「ダメ!」と叱って鼻を指ではじきます。咬まれたら、いつも同じようにやります。オトナの猫でも同じです。
グルーミング
 シャンプーやブラッシングは猫を清潔に保つためには必要です。しかし、「シャンプーが好き」なんていう猫はあまりお目にかかれないでしょう。でも、比較的ブラッシングは好きな猫さんが多いです。猫とのコミュニケーションを大切にするためにも、猫のお腹に毛球を溜めないようにするためにも、ブラッシングは最適です。
 猫用のブラシを用意して、やさしく声をかけながら毛並みに添ってブラッシングして下さい。もし嫌がったら少し休んでまたトライ。徐々に慣れさせていって下さい。耳の中や口の中も見てみましょう。毎日触っていれば、猫も体に触られることに慣れ、病気の早期発見にも繋がりますし、動物病院での診察も楽になります。
飼い主のしつけ
 猫と一緒に暮らしていると、人間が猫をしつけるよりも、猫に人間がしつけられているような気がします。いかにおいしくごはんを食べていただき、安心して爆睡していただき、たのしく遊んでいただくか‥‥、日々、研究と努力です。
 中には猫が大好きなのにもかかわらず、どうしても猫に嫌われてしまう人がいます。どうしてなんでしょう? そういう人は、自分では良かれと思ってやっていることが、猫を不機嫌にさせているのです。例えば、猫が寝ている時に無理矢理起こして遊ぼうとするとか、「こっちのほうがいいぞー」などと言って、お気に召さない猫用のベッドで寝かせようとするとか、声がやたらに大きいとか‥‥。
 猫が一番好きなのは、猫が用事のある時以外は、適当に放っておいてくれる人です。そして、猫がかまって欲しいモードに入った時、すかさずかまってくれる人、お腹がすいたら、おいしいごはんをくれる人です。がんばりましょう。
 猫がどんなことをしても、決して感情的になってはいけません。猫は、日曜日の朝早くからあなたを起こし、せっかく用意したごはんに「他にないの?」とけちをつけ、キーボードに乗って、せっかく書いた原稿に「っっっっっっpっっっっっっっっd6666666」などと訳の分からない文字を書き込み、なけなしのおこずかいをためて買ったバッグで爪をとぎ、イッチョーラを毛だらけにし、「さて。寝るか」と思った瞬間、お気に入りの枕の上にゲロを吐くでしょう。
 でも、笑いましょう。全てを許しましょう。なぜなら、彼らはあなたのうちにやって来た天使だから。それは爆睡する彼らの顔を見ればわかりますよね。
避妊・去勢手術は飼い主の責任
 子猫を繁殖させるという明確な目的を持って猫を飼われているのでなければ、避妊・去勢手術は必ず行って下さい。中には「本能を奪うのはかわいそうだ」という人もいらっしゃいますが、それは人間の勝手な思い込みです。犬や猫は人間社会の中で生きている動物で、野生動物とは違うということを認識して下さい。
 避妊・去勢手術をしていない室内飼いの猫ならば、発情して異性を求めているのを無理矢理我慢させ続けることになります。もしもあなたが青春時代にずっと家の中に監禁されていたとすればどうでしょうか? また、自由外出猫であれば、メスなら年に何度か妊娠し、そのたびに複数の子猫を産むでしょう。その子猫たち全てに責任を持てるでしょうか? オスであれば、どこかのメスに子どもを産ませています。その子猫たちの命もあなたの責任なのです。日本で殺処分される犬猫は年間約70万頭。その大多数が野良の子猫たちだという現実を考えてみて下さい。
 避妊・去勢手術をすれば、オスの場合、発情時の鳴き声やスプレー行為の匂いから解放されます。攻撃的な猫も比較的おとなしくなり、ケンカによる怪我や伝染病に感染する確率が減ります。メスの場合、やはり発情時の鳴き声から解放され、「子宮蓄膿症」や「乳腺腫瘍」といった致命的な生殖器の病気の予防になり、妊娠、出産、育児による体力の消耗もなくなることで、元気で長生きできます。
 避妊・去勢手術をした猫は異性に興味を示さなくなりますが、それは“いつまでも子どもでいてくれる”ということです。あなたが母親のように猫に接してあげれば、猫はオトナになってもあなたに甘え、楽しく、健康に暮らすことができるのです。殺されるために生まれてくるような命を作らないためにも、バースコントロールは飼い主の責任として、必ず行って下さい。
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『タマちゃんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
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