ポチくんのお部屋
犬ってなぁに?
犬の歴史
 犬の祖先はオオカミといわれていますが、確かなことはまだ分かっていません。しかし、最近のDNAの研究や、古代の遺跡から発掘された犬の骨がオオカミのものときわめてよく似ていることなどから、やはりオオカミ、中でもインドオオカミが犬の主要な祖先であろうという見方が有力です。

 では、いつごろオオカミから犬になったのでしょう? これもはっきりした年代はわかりませんが、遺跡の調査の結果などから、1万5000年〜1万2000年前ごろと考えられています。少なくとも中石器時代には人間と犬は共同生活をしていたことは確かなようです。採集狩猟生活をしていた石器時代の人間にとって、犬は危険を知らせてくれたり狩りの手助けをしてくれ、そのかわり犬たちは安定した食糧と住む場所を得られたのです。サハラ砂漠にある新石器時代の壁画にも、人間と協力して狩りをする犬の絵が描かれています。
 ヒツジやヤギなどを家畜化するようになってからは、牧羊犬としてその見張りをしてくれたり、人間の社会が複雑になるにつれ犬の役割も増え、闘犬や警察犬など、その目的に合わせて様々な性質や体型の犬が作られてきました。実用的な目的からではなく、ペットとしての犬が登場したのは17世紀以降です。19世紀にはステイタス・シンボルとして小型の愛玩犬を飼うことが貴族社会で流行しました。産業の発達によって、一般市民にも生活に余裕ができてくると、ペットとして犬を飼うことも一般化していきました。

 このようにして私たち人間と犬とは、非常に深いつながりを持って現在に至っています。野生のオオカミに始まって、わずか1万年あまりの間に体重80キロのセントバーナードからたった2キロのチワワまで、多種多様な犬たちを人間が作り出してきたわけです。
犬の習性
 犬は私たちにとって家族の一員です。日々の生活を共にすることで、私たちは彼らのことを「子ども」のように擬人化し、自分たちと同じ人間であるかのように錯覚してしまいます。しかし、犬は人間とはまた違った習性をもつ動物なのです。そして、その習性をちゃんとわかってあげることが、これからの私たちと犬とのより深い信頼関係につながります。
犬の社会性
 歴史でもふれたように、犬の祖先はオオカミです。彼らは群れを作り、リーダーとなる個体(アルファー)を中心に、一頭一頭の序列があり、それぞれの役割分担があります。それによって、外敵から身を守り、狩猟の成功率も高めているわけです。
 人間社会の中で生活している現代の犬にとっての“群れ”とは、すなわち“家族”です。ですから、犬の飼い主である人間が良きアルファーとなり、彼の居場所をきちんと決めてあげなくてはならないわけです。好き勝手にさせておくと、犬は自分がリーダーであると思い違いをすることになり、犬にとっても人間にとっても不幸な結果をもたらすことになります。
追いかける
 子どものころ、犬に追いかけられた経験のあるかたも多いと思います。(私もです。)犬の祖先はオオカミであり、狩猟によって食べ物を得ていました。ウサギなどの獲物を追いかけて捕まえていたわけです。つまり、「動くものを追いかける」というのは、かれらの“本能”なのです。現代の犬でも、それが子どもや自転車を追いかけるという行動に現れます。
縄張り
 これは犬に限ったことではありませんが、動物のオスは縄張りを作ります。おとなのオス犬が、後ろ足を上げて電柱などにおしっこをかけるのは、「マーキング」といわれる臭い付けの行動です。「ここはオレの縄張りだからね。」という印です。また、おしっこの臭いでその犬の大きさや年齢、性格までわかるのだそうです。他の犬がその臭いを嗅いで、自分より強いやつかどうかを判断して、自分よりも弱いと判断すると、その上からまたおしっこをかけて「いいや、ここはオレの縄張りだよ。」と言い返すわけです。なぜ縄張りを作るのかというと、それによって外敵の侵入を防ぎ、食べ物となる獲物を確保し、メスを獲得して種の存続をはかるためです。
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犬の能力
聴力
ポチくんイラスト(犬の悪口は禁物)  犬はとても耳のいい動物です。人間の3000〜4000倍もの音を聞き分け、人間には聞こえない超音波も聞こえます。耳を動かすことができるので、音の方向を関知する能力も優れています。犬の悪口は禁物です。(ホントですよ!)
視力
 犬は目には赤い色はほとんど見えず、青と緑の2色で物をみているといわれています。近くの物に焦点を合わせることも苦手です。(訓練により矯正は可能です。)両眼視野(立体視野)は人間よりも狭いですが、一眼視野は人間より広く動体視力は発達しています。なので、動く物には敏感に反応します。
臭覚
 鼻は犬にとって最も重要な器官で、人間の100万倍の能力を持っています。犬の生活は、臭いを嗅ぐことで成り立っているといってもいいでしょう。飼い主や自分の兄妹や親、友達、知らない人などを全て臭いで嗅ぎ分けます。警察犬や麻薬犬、災害救助犬なども、みんなこの能力を人間のために発揮してくれているわけです。ありがたいですね。
味覚
 味の基本は「甘い」「酸っぱい」「苦い」「塩辛い」の4つです。犬はそのうち「甘い」「酸っぱい」「塩辛い」は分かるのですが、「苦い」というのは分かるのか分からないのか分かりません。犬が最も強い刺激を感じるのは「甘い」味。だから犬って甘い物が好きなんですね。でも、好きなだけ甘い物を食べさせてはいけませんよ。病気になります。
運動
 犬の中で一番速く走れるのは短距離ならグレーハウンドで、時速約67キロで走ります。長距離ならフォックスハウンド。時速約50キロの速さで数キロは走れます。動物の筋肉には瞬発的な運動に関わる白筋と、持続的な運動に関わる赤筋があり、犬の運動能力の高さは、この白筋と赤筋の割合と、赤筋のミトコンドリアの密度の高さにあります。
反射
 犬ってアタマいいですよね。それは後天的反射能力のおかげです。反射とは聴覚・臭覚・視覚から得られた情報を行動に生かす能力です。先天的反射と後天的反射によって、どう行動するかを決定します。先天的反射は“本能”として生まれた時から備わっている反射で、後天的反射は“学習”によって備わるものです。先天的反射では、「子ども(動く物)は“追いかけて捕まえる”」ですが、後天的反射によって、それを「子どもは追いかけない」に変えることができるのです。
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犬の言葉
 犬の社会は“序列”の社会であり、その中の役割分担がきちんと決まっているということは、コミュニケーションが大切にされているということです。時には壮絶な戦いによって力関係が決まることもありますが、無用な争いは群れ全体の力を低下させ、種の存続を脅かすことにもなります。そのため、彼らは“会話”をすることで争いを避けているのです。
 私たちが言葉によってお話をするように、犬には犬の言葉があります。「ワンワン」とか「キャンキャン」とか「ウ〜」とか「クゥ〜ンクゥ〜ン」とか、声に出す言葉もありますが、それ以外に私たちがなかなか気がつかない“ボディランゲージ”もあります。これらを知ることで、私たちも彼らに信頼されるアルファー(群のリーダー)となることができるのです。
威嚇・攻撃
 犬がしっぽを立ててじっとにらむのは“攻撃”の準備です。毛を逆立て牙をむいてうなるのは、“威嚇”しているのです。初対面の犬の目をじっと見たりするのは危険です。それは“挑戦”の意味だからです。リーダー(飼い主)と向き合っている人は“敵”として認識され、横に並んでいる人は“味方”として認識します。初めて会った犬の場合には、このことに注意して下さい。
嬉しい・遊んで
 歯をむいていても、目を細めてしっぽを振っている時は、「嬉しい」時です。笑っているようにも見えます。頭を低くしてお尻を高く上げ、しっぽを振るのは遊んで欲しい時。前足で「おいでおいで」ってするのも遊びのお誘い。人の手足に鼻をこすりつけたりするのも、自分のことをかまって欲しい時です。 ポチくんイラスト(笑う犬)
カーミング・シグナル
 カーミング・シグナルとは、犬が“相手及び自分を落ち着かせるため”の行動で、犬のボディランゲージの中でも、最も重要なものです。これにより、相手に自分がまったく敵意を持っていないことを知らせ、相手から威嚇・攻撃されることを避け、また、自分がストレスや不安を感じた時に、自分を落ち着かせることもできるのです。

 ほんの一瞬、顔を横に向けたり、しばらく横に向けたままにしたり、度合いの差はありますが、顔を背けたり目線をそらしたりするのは、犬がその状況に対して少し不安を抱いている時です。初対面の2頭の犬が出会った時にも彼らはこのような行動をします。そして、ペロリと舌を出して鼻をなめたりします。このペロリと舌を出すというのもカーミング・シグナルです。「こらっ!」っとあなたがちょっと怒ったりした時に、犬がこうするのをご覧になったことがあるのではないでしょうか?
 相手に対して横向きになったり、背を向けたりするのも、自分や相手の気持ちを落ち着かせるための行動です。あなたが怒っている時にもこのような動きをして、あなたを落ち着かせようとします。ですから、怒っているのにむこうを向いてしまったからと言ってまた怒っても無駄です。彼らはあなたを無視しているのではなく、少し落ち着いて欲しいと思っているのです。
 また、背を向けるだけではなく、その場に座ってしまうこともあります。もっと強力に、伏せの姿勢をとる犬もいます。遊びがエスカレートしてはしゃぎ過ぎている犬を落ち着かせる時や、初対面の犬が興奮しているような時にも、私たちはこれを応用し、犬に顔を背けたり背を向けて座ってみることができます。初対面の人に自分の飼い犬が不安を抱いているような時は、できるだけそのお客様にも座ってもらいましょう。多くの犬は正面から見られることに不安を感じるのです。犬を見る場合には、目を細めてやや伏せ目がちにすると、目線がやわらかくなって“アイ・コンタクト”がうまくいく場合があります。
 頭を低くしてお尻を上げしっぽを振るのは遊びに誘っているのですが、そのままの姿勢でじっとしている時は、カーミング・シグナルです。また、ゆっくりとした動きや動きを止め、静止した状態もそうです。早く犬を呼び戻そうとして声を荒げたりすると、ますます犬はあなたを落ち着かせようとして動作を緩慢にし、しまいには立ち止まってしまいます。
 散歩の途中で犬が立ち止まって、地面の臭いを嗅ぎ始めることはないですか? もちろんこれは単純に何かの臭いを嗅いでいる場合もありますが、カーミング・シグナルである場合もあります。見知らぬ犬が近づいて来たり、あなたが犬に対して怒鳴ったりした時に、犬は相手に対して敵意がないことを示して、落ち着いてもらおうとしているのです。
 犬の言葉の中でも一番おもしろいのは「あくび」です。やはりこれもカーミング・シグナルなのです。犬がイライラしたり、ストレスを感じていると思ったら、どうぞあなたがあくびをしてみて下さい。きっとリラックスしてくれるでしょう。逆に飼い犬が何度もあくびをしている時には、あなたに対して「もっと落ち着きなさいよ」と言っているのです。静かにしてあげましょう。
 しっぽを振っていても、必ずしも犬が「嬉しい」と感じているとは限りません。相手に対して恐怖や不安を抱き、なんとか自分を攻撃して欲しくないというような時にも、しっぽを振るのです。犬に言うことを聞かせようとして怒鳴ったり体罰を与えたりしていると、犬はあなたの顔色を伺って地面にはいつくばり、おしっこをちびりながらしっぽを振るようになりますよ。それはかわいそうですね。

 犬の発するこれらのシグナルを、リーダーである飼い主がきちんと受け止めてあげることは重要なことです。そのためには、日頃から犬をよく観察して、小さなささやくような声も聞き逃さないように気を付けて聞いてあげて下さいね。そして犬からも信頼されるアルファーになって下さい。
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『ポチくんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
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