ポチくんのお部屋
犬の主な病気
 犬の様子がいつもと違う、何かおかしいなと思ったら、動物病院にご相談下さい。何でも気軽に相談できる主治医となってくれる先生を、日頃から見つけておくことが肝心です。犬は自分で「ここが痛いよ」と言えないし、「それは何のお薬ですか?」と先生に聞くこともできないので、飼い主さんがしっかりしてあげなければいけません。良い先生を探すことも飼い主さんの大切な役目です。
 ここでは犬の主な病気をご紹介しますが、あくまでもこれは基礎知識。勝手な自己診断は命とりです。私たちにできることはあくまでも“予測”であって、“診断”は信頼できる獣医さんにおまかせしましょう。わからないことはどんどん先生に質問して下さい。治療方針を先生と話し合い、決めたことはしっかりと守って下さい。勝手な判断で薬を止めたり飲ませたりしてはいけません。困ったことがある時は、先生にご相談の上、対処していきましょう。
ポチくんイラスト(目の病気) 「結膜炎」
 結膜の血管が充血して赤くなり、涙の量が増えます。細菌感染や、外からの刺激、アレルギーなどが原因です。他の病気に起因することもあります。
「角膜炎」
 涙や目ヤニが多くなり、痛みで目が開けられなくなります。悪くなると目が白く濁ってきます。細菌感染や、外からの刺激、アレルギーなどが原因です。他の病気に起因することもあります。
「角膜潰瘍」
 涙や目ヤニが多くなり、痛みで目が開けられなくなります。潰瘍が深いと目が白く濁ってきます。角膜に穴が空き、ぶどう膜炎になることもあります。結膜炎・角膜炎によるかゆみやケンカで目をこすったり目を傷つけて、角膜が削れてしまうことなどが原因です。
「乾燥性角膜炎」
 粘度のつよい目ヤニで、目が開かなくなります。角膜の透明性がなくなり、目が白く濁ってきます。ドライアイで涙の量が少なく、角膜表面の保護がないため炎症が起こります。
「ぶどう膜炎」
 白目の充血が強く、動くことを嫌がったりもします。緑内障や白内障を併発したり、角膜が濁ってしまったりもします。角膜潰瘍などの目の炎症、外傷、感染症、免疫不全、腫瘍などが原因になります。
「緑内障」
 急性の場合は痛みが強く、目が充血し、眼球が大きくなります。眼圧が異常に高くなり、白内障や角膜の白濁、変性が見られ、網膜が圧迫されて失明に至ります。完治することはできませんが、眼圧を抑える目薬や飲み薬はあります。手術を行うこともあります。
「白内障」
 水晶体が白濁し、進行すると大理石の模様のようになり、失明します。老年性、先天性、遺伝、外傷などの他、糖尿病などからの併発もあります。
「チェリーアイ」
 ピンクの瞬膜腺が見えますが、特に痛みはありません。瞬膜の分泌腺が脱臼してさくらんぼのように見えているのです。原因は遺伝といわれています。手術で治しますが、切除してはいけません。
耳鼻咽喉
ポチくんイラスト(耳の病気) 「外耳炎」
 外耳道の炎症とかゆみ(ときには痛み)を伴い、頭や耳を振ったり耳介や耳の後ろを引っ掻きます。異臭を伴う分泌物が耳道から出てきたりもします。炎症が慢性化すると耳道の粘膜が厚くなって外耳道が狭くなり、耳の穴がふさがってしまいます。耳垢に真菌が繁殖して起こります。また、ダニや異物が入ったことが原因のこともあります。
「耳血腫」
 外耳炎などの激しいかゆみで耳を強く引っ掻き、耳介の軟骨と皮膚の間に血液が溜まって腫れあがり、耳の形が変形してしまいます。血液を抜いてもまたすぐに溜まってしまうので、手術をするのが確実です。
「中耳炎・内耳炎」
 外耳の炎症や口や鼻の感染、全身性の感染が内耳にまで波及し、悪い方の耳を掻いたり頭を振ったりします。悪い方の耳を下にして頭を傾けて、まっすぐ歩けなくなります。顔面神経や前庭神経が圧迫されて、顔面神経麻痺やホーナー症候群などにもなります。急性の場合は吐き気や嘔吐が見られることもあります。抗生物質の投与が必要で、手術で切開して洗浄する場合もあります。
「鼻炎・副鼻腔炎」
 鼻腔内や鼻粘膜の炎症を鼻炎、炎症が副鼻腔にまで達したものを副鼻腔炎といいます。くしゃみ、鼻水、鼻をこするなどの症状が見られます。ウイルスや細菌、カビなどの感染、異物によるアレルギー、上顎の歯根膿瘍、鼻腔内の腫瘍などが原因です。カビの感染による肉芽腫や鼻腔内腫瘍が原因の時は、顔が変形してきます。病気が鼻腔の奥にまで波及すると、痙攣や発作などの神経症状も起こします。
ポチくんイラスト(口の病気) 「歯石・歯肉炎」
 歯肉が赤く充血し、腫れたり出血したりします。口臭がひどくなりよだれも多くなります。痛みで食欲がなくなることもあります。細菌の感染により、心内膜炎や細菌性髄膜炎を起こすこともあります。子犬の頃からブラッシングの習慣をつけておきましょう。
「口蓋裂」
 生まれつき子犬の上顎の真ん中に亀裂がある病気で、母乳をうまく吸うことができません。6〜8週齢になれば、外科的に治します。手術で治すまでは、哺乳に注意が必要です。
「乳歯遺残」
 犬は生後約3〜6週齢で乳歯が生え、約半年前後(遅くても12ヶ月)で永久歯に生え替わりますが、この時期になっても永久歯が生えてこなかったり、生えているのに乳歯が残っているものを「乳歯遺残」といいます。麻酔をして残っている乳歯を抜きます。
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消化器系
ポチくんイラスト(食べ過ぎ) 「食道炎」
 食欲不振、体重の減少、よだれ、血の混ざった液体の吐出などが見られることもありますが、無症状こともあります。刺激性の化学物質や温熱障害、嘔吐、異物が原因で起こります。
「食道狭窄」
 外傷や食道炎、腫瘍、腐敗性物質の摂取、全身麻酔による胃内容物の逆流などが原因で、食道の内径が狭くなり、食事が呑み込みにくくなったり食後に吐いたりよだれをたらしたりします。
「胃拡張・捻転症候群」
 胃の中にガスや液体が停滞し、胃の流出障害が起こり、食後急激に腹部が膨張し、吐き気やよだれをたらすようになり、チアノーゼ、呼吸困難、頻脈、血圧降下などのショック症状が見られます。速やかに治療をしなければ、数時間で死亡します。大量の食事や水の急激な摂取、過度の運動が原因です。
「胃潰瘍」
 嘔吐が見られ、吐いたものに血が混じるようになり、重症になると鮮血を吐き、貧血になることもあります。消炎剤の摂取やストレス、神経性疾患、腸から胃への内容物の逆流、胃酸過多、腫瘍などが原因です。
「膵炎」
 急性と慢性があり、急性の場合は元気がなくなり、食欲不振、嘔吐、下痢、腹痛を起こします。慢性の場合は症状がわかりにくいのですが、徐々に体重が減り、嘔吐や下痢を繰り返します。機能障害が残り、完治は見込めません。低脂肪で消化のよい食事をこころがけましょう。
「急性肝炎」
 中毒、感染、寄生虫が原因で起こります。食欲不振や下痢、腹部を押すと痛がったり黄疸が出たり出血しやすくなり、痙攣や昏睡などの神経症状が出ることもありますが、相当悪くても症状が出ないこともあり、気づかないまま、慢性化していくことが多い病気です。劇症肝炎の場合は死亡することもあります。感染を防ぐためのワクチン接種や、寄生虫を防ぐために定期的な検便、中毒を起こす物質を近くに置かないなどの予防策が大切です。
「慢性肝炎」
 元気がなく、食欲不振、下痢、便秘、嘔吐などがあり、だんだん痩せてきます。多くの場合は急性肝炎から慢性に移行していきますが、他の疾患からの併発もあります。活動性肝炎と非活動性肝炎があり、活動性肝炎は肝硬変に移行しやすい病気です。
「肝不全」
 肝臓の機能が著しく低下し、生命の維持が困難になり、神経症状を併発します。急性と慢性があり、急性の場合は黄疸、腹水、出血があり、その後、意識障害を起こします。口からアンモニアのような臭いがすることもあります。慢性の場合は肝硬変が進行し、腹水、出血、意識障害が繰り返し見られます。
「腸閉塞」
 炎症や腫瘍、異物、寄生虫などが腸でつまって、内容物が送れない状態です。突然の嘔吐、下痢、食欲不振、腹痛、腹部膨満などが見られます。手術によって閉塞を解除します。
「腸重積」
 腸の一部がその前後に入り込んだ状態で、腸閉塞の原因でもあります。急性の場合には数日で死亡することもありますが、不完全腸閉塞の状態で慢性化する場合もあります。感染、寄生虫、大量の摂食、異物の誤飲などが原因です。
「急性出血性大腸炎」
 大腸の粘膜が何らかの原因で激しく損傷し、血液の混じった粘液性の激しい下痢が突然起こります。腹痛により元気や食欲がなく、脱水症状になります。急性の感染症、刺激性物質の誤食、ストレス、異物などが原因です。
呼吸器系
ポチくんイラスト(咳をする) 「軟口蓋過長」
 大きな呼吸音やいびきをかき、重症になると呼吸困難を起こすこともあります。口の中の軟口蓋と咽頭との長さが合わないために起こる、先天的な疾患です。
「気管支狭窄」
 異物やタン、寄生虫などが気管支にひっかかっていたり、気管支壁の肥厚や気管支近くの腫瘍などで圧迫され、気管支内腔が狭くなって起こります。が咳や呼吸困難で元気がなく、発熱し、肺炎、気管支炎を併発することもあります。
「気管支炎」
 気管支の粘膜や周囲の炎症で、炎症が咽喉頭や鼻腔におよんだり、細気管支や肺に進行します。ウイルスや細菌の感染によって起こりますが、刺激性物質や寒冷、異物、アレルギー、首輪などの圧迫、腫瘍などが原因のこともあります。症状は主に咳ですが、細菌感染がある場合は発熱や鼻汁が出たりもします。
「肺水腫」
 肺の間質細胞、気道、肺胞に液体や溶質が異常にたまって急性の呼吸不全を起こし、死亡することもあります。呼吸速拍、呼吸困難、起坐呼吸、咳が出て落ち着きがなくなり、進行すると血の混じった泡沫性の鼻汁が出て、呼吸のたびに肺から雑音がするようになります。チアノーゼを起こし、横になることもできず窒息死に至ります。
「肺気腫」
 肺胞壁や気管支の拡張、または破壊によって肺の中の空気量が増え、肺胞が膨大し肺組織の弾力性がなくなり、その後、肺胞壁は萎縮して消失します。呼吸困難や咳が出て、鼻腔や口腔から泡を出したりもします。皮下気腫を起こすと触るとプツプツと音がします。
血液と循環器系
ポチくんイラスト(心臓がドキドキする) 「心不全」
 運動や興奮した時に息切れしたりします。元気がなくなり、歩くのを嫌がったりもします。症状が進むと安静時でも咳が出たり呼吸困難になったりします。心臓の機能が低下して、体に充分な血液を拍出できなくなることにより起こります。
「僧帽弁閉鎖不全」
 僧帽弁は心臓の左心室と左心房の間にある弁で、この弁の形が変形して閉まらなくなり、心臓の機能が低下してしまうのが僧帽弁閉鎖不全です。一般には老犬で発症することが多い病気です。最初は夜や明け方の温度差のある時間に咳が出るようになり、だんだん一日中咳をするようになり、運動を嫌がったり元気がなくなってきます。進行すると常に息苦しそうになり、チアノーゼを起こしたり腹水が溜まったりして、ほとんど動けなくなってしまいます。完治することはできませんが、進行を遅らせることはできます。
「免疫介在性溶血性貧血」
 赤血球に異常が起きて、脾臓や肝臓、または血管の中で破壊され、貧血になります。感染症や腫瘍などの他の病気で薬物投与を行っている場合に二次的に起こるものと、原因不明で起こるものがあります。症状は食欲不振、落ち着きがない、疲れやすいなどで、はっきりした特徴はありません。貧血がひどくなると歯茎などの皮膚の色が白っぽくなります。黄疸や嘔吐、下痢などが見られることもあります。急性の場合は死亡することもあります。
「フィラリア症」
 フィラリアは「犬心臓糸状虫」と呼ばれ、心臓に寄生する10〜30cmくらいの虫です。蚊によって媒介されます。最初は軽い咳が出るくらいですが、虫が寄生している右心室から肺動脈にかけて拡張し、頻脈や呼吸数の増加、貧血、浮腫、腹水、失神などの症状が見られます。突然発症し、死亡することもある恐い病気です。しっかり予防して下さい。
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内分泌系と代謝
ポチくんイラスト(毛が抜ける) 「副腎皮質機能亢進症」
 副腎皮質ホルモンの過剰分泌が原因です。多飲、多尿、多食が見られ、脱毛や皮膚の色素沈着、石灰沈着、二次感染、脂漏(皮膚が脂っぽくなること)、筋力低下、腹部膨満、腹水、無発情、睾丸の萎縮などの症状が出ます。
「副腎皮質機能低下症」
 副腎皮質ホルモンやミネラルコルチコイドの不足が原因です。副腎皮質ホルモンの投与を急に中止したりすると発症しますが、ほとんど症状がなく、症状にもこれといった特徴がありません。
「甲状腺機能低下症」
 文字通り甲状腺ホルモンの分泌低下です。動きや反応が鈍く寝ていることが多いなど、元気がなくなり、食欲の低下、全身の脱毛、皮膚の色素沈着、不妊、無発情などが見られます。
「糖尿病」
 糖尿病には2つのタイプがあります。「インスリン依存性糖尿病」は膵臓からインスリンが分泌されないことが原因です。一方「インスリン非依存性糖尿病」はインスリンは分泌されていても、膵臓以外の問題でインスリンの働きが阻害されたり、反応が鈍くなったりすることが原因で起こります。水を飲む量と尿の量が増加し、白内障が進行します。徐々に痩せてきて食欲もなくなります。インスリン依存性の場合は生涯にわたってインスリンの投与が必要です。
「低血糖」
 グリコーゲンを蓄積する肝臓の能力が低いことが原因です。膵臓の腫瘍などでインスリンの分泌が過剰になったり、肝硬変などの重度の肝不全の場合にも起こります。元気がなくなり、軽い痙攣などが見られます。砂糖水や蜂蜜を与えて血糖値を上げます。重症の場合は体温が低下し、意識の低下または消失もあり、死亡することもあります。すぐに獣医師に連絡して下さい。
「エストロジェン中毒」
 発情ホルモンのエストロジェンは、主に卵巣と胎盤から分泌されますが、過剰に分泌されることによって、障害を起こします。雄では精巣の腫瘍によってエストロジェンの過剰分泌が起こります。脇腹、頸部、前胸部、背中、大腿部の脱毛、皮膚の色素沈着、角化亢進や苔癬化(象の皮膚のようになること)が左右対称に起こります。雌では無発情や持続発情などの異常発情、外陰部の充血、雄では生殖器の矮小化や排尿姿勢の変化などの雌化が起こったりすることもあります。エストロジェン過剰により骨髄が抑制され、貧血や白血球の減少、血小板の減少が起き、進行してしまうと元にはもどりません。
「熱射病・日射病」
 犬は汗腺が少なく、呼吸によって体温調節をしていますが、高温多湿、換気の悪い場所では調節がうまくいかなくなってしまい、熱射病になります。炎天下での直射日光にあたっていると日射病になります。ぐったりして呼吸が速くなり、体温が上昇し、肺水腫を起こします。すぐに体を冷やして水を飲ませて下さい。脳浮腫を起こすと痙攣や意識低下、または消失状態になってしまいます。夏の外出時には充分注意が必要です。留守番時の室温にも気を付けて下さい。
皮膚
ポチくんイラスト(皮膚が痒い) 「膿皮症」
 最初に湿疹のような丘疹ができ、それが次第に広がって膿を持ってじゅくじゅくした状態になります。不衛生な環境や栄養不足、寄生虫、真菌、ウイルスなどが原因で細菌感染して起こります。
「急性湿性皮膚炎」
 脱毛を伴い、赤くジクジクした皮膚炎が部分的に集中して発症します。ノミや異物、刺激物の付着により、自分で噛んだり引っ掻いたりして起こります。
「脂漏症」
 皮膚がカサカサになって、大量のフケが出るものと、ベタベタして異臭のあるものがあります。皮膚の角化と皮脂腺に問題があり、ホルモンの異常や寄生虫、真菌感染など、他の病気が原因になっていることもあります。
「皮膚真菌炎」
 最初は小さな赤い湿疹のようなものができて、脱毛とフケを伴った円形の皮膚炎を起こすものと、不規則なびらん性の皮膚炎になるものがあります。皮膚に真菌(カビ)が感染することで起こります。家のお掃除も大切です。
「アトピー性皮膚炎」
 アレルギー体質の犬が、抗原(花粉やほこり、ダニなど)に対してアレルギー反応を示すことで発症します。季節性であったものが次第に慢性化し、症状が悪化することもあります。かゆみのためにかき壊したり膿皮症、脂漏症などの合併症を起こしたりします。外耳炎や結膜炎が見られる場合もあります。抗原の可能性のあるものを排除していくか、できるだけ犬から遠ざけることで、発症をコントロールしていきます。発症した場合はかゆみを抑えるための対処療法が必要です。
「アレルギー」
 アレルギーの原因には様々なものがあります。食物アレルギーはドッグフードなどに含まれる食物の成分に対してアレルギー反応を起こして皮膚にかゆみが出たり、下痢を起こしたりします。アレルギーチェックをして食餌療法で治療します。ノミアレルギーはノミの唾液成分に反応するアレルギーです。治すためにはノミを徹底的に退治して環境からノミを無くしてしまうしかありません。ステロイド剤は一時的にかゆみを抑える効果はありますが、副作用もあるので投与し続けることはできません。アレルギーの原因物質を特定し、それを除去することが大切です。
「皮膚の腫瘍」
 犬の場合は皮膚にできる腫瘍が多く、最初は柔らかく、悪性になると硬くなったり大きくなったり数が増えたりします。周辺への拡大が進むと内臓への転移の危険性も高くなります。皮膚にできる腫瘍は発生する細胞の種類によって、それぞれちがった腫瘍になります。飼い主さんの早期発見が重要です。マメなお手入れと定期検診を受けましょう。
寄生虫
ポチくんイラスト(ノミ) 「ノミ」
 犬に寄生するノミはイヌノミばかりではありません。ネコノミ、ニワトリノミも寄生し、一番多いのはネコノミです。条虫寄生の原因となり、刺されるとかゆみで掻き壊し脱毛したり、アレルギーの原因ともなります。ノミの発育を阻害する薬を服用し、お掃除もマメにして下さい。
「犬疥癬」
 犬疥癬虫の寄生により起こります。強いかゆみが特徴で、掻き壊しにより二次感染が起こりやすくなります。寄生されている動物との直接的な接触によって感染しますので、完治するまでは他の犬との接触を避けて下さい。接触した人間にもかゆみが出ることもありますが、人では増殖はしません。
「耳ダニ」
 かゆみのため耳を振ったりしきりに耳の付近をかきます。耳垢もたくさん出てきます。かきむしって耳を傷つけたり耳血腫になることもあります。
「バベシア症」
 発熱や貧血、黄疸、食欲不振で元気もなくなります。血色素尿や下痢、嘔吐があることもあります。バベシア原虫感染による伝染病です。マダニにより伝搬されます。腎機能障害を起こして死亡することもあります。
「条虫」
 条虫は最も一般的に見られる寄生虫の一つです。ノミの寄生によって感染します。糞と一緒に卵を持った条虫の体の節が排出されます。虫が多数寄生すると消化不良を起こすことがあります。
「回虫」
 胎盤、乳汁、虫卵の摂食、待機宿主の摂食などで感染します。子犬では腹部膨満、下痢、嘔吐、肺炎、腸閉塞などを起こし、死亡することもあります。成犬の場合は下痢、嘔吐を起こし、肝臓、肺、筋肉、腎臓など様々な場所に迷入し、障害を起こします。人に感染することもあるので注意が必要です。子犬は生まれた時にすでに感染していることが多く、必ず虫がいるものと考えて駆虫して下さい。
「鉤虫」
 鋭い牙を持ち、小腸の繊毛に食いついて吸血します。腹痛を起こし、血便や慢性の貧血、食欲不振、栄養不良などが見られます。子犬に大量に感染すると、死亡することもあります。
「鞭虫」
 鞭のような形をしていて口から感染します。卵は土の中で5年間も生存していることが可能です。盲腸粘膜内に入り込み吸血します。長期にわたって軟便、下痢、粘血便などの症状が見られます。
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骨・筋肉・神経
ポチくんイラスト(骨折などのケガ) 「会陰ヘルニア」
 お尻の横が盛り上がって膨らみます。押すと引っ込むこともありますが、また膨らんできます。ヘルニアを起こしているのは直腸や膀胱、腹腔内脂肪などで、排尿や排便が困難になります。主に去勢をしていないオスの老犬に多発します。
「膝蓋骨脱臼」
 膝のお皿の骨がはずれてしまう病気です。事故や外傷などでも起こりますが、遺伝的要因のあるものが多くの場合原因になっています。小型犬では主に内側に、大型犬では外側に脱臼します。子犬で先天的に膝蓋骨の内方脱臼が見られる場合は、筋肉や靱帯の発育不全もあり歩けなくなることもあります。
「股関節形成不全」
 レトリバーやシェパードなどの大型犬に多く、遺伝的要因が大きい病気です。徐々に痛みが激しくなり、歩けなくなってしまいます。消炎剤、鎮痛剤などの投与や手術もありますが、完治することはできません。
「関節炎・骨関節症」
 関節面が変形して炎症を起こした状態です。運動量の多い犬に見られますが、リウマチなどの自己免疫性疾患や細菌感染が原因のこともあります。痛い方の足に体重をかけるのを嫌がり、歩き方がぎこちなくなったり触ると痛がったりします。
「椎間板ヘルニア」
 ダックスフンドやビーグルなどの胴長短足の犬に多く見られます。軽度の麻痺から足が全く動かなくなるものまで、脊髄の圧迫の程度や場所によって症状も様々です。自力での排便、排尿が困難になることもあります。治療が遅れると、麻痺が元にもどらなくなってしまいます。
「てんかん」
 腫瘍やジステンパー、細菌の感染、水頭症などが原因で発作が起こるものを症候性てんかんといいます。5歳以下の若い犬に見られる突発性のてんかんは原因がまだよくわかりません。また、高アンモニア結症や低血糖、尿毒症、中毒、アレルギーなどでも発作を起こすことがあります。パグには「パグ脳炎」という特有の家族性疾患があります。発作は通常数分間で終わりますが、何度も繰り返し起こす重積発作が起こった場合、呼吸困難による窒息や体温の上昇、筋肉組織の破壊などによって死亡することもあります。投薬によって発作をコントロールする長期の治療が必要です。発作の前後を含めた詳しい状況や発作の時間、発作のパターンを獣医師に伝える必要がありますから、あわてずよく観察して下さい。
「老犬性痴呆」
 動物の痴呆の定義はまだはっきりしていませんが、最近では犬も長生きするようになり、人間と同じような痴呆の症状を見せることもあるようです。夜鳴き、徘徊、失禁、トイレ以外の場所での排泄などがおもな症状で、刺激に対する反応が鈍くなり、飼い主が分からなくなったりもします。これといった治療法も今のところありませんが、これから“老犬介護”も重要な問題になってきそうです。
「前庭症候群」
 第・脳神経の前庭神経の障害により起こる病気です。原因はほとんどの場合が内耳炎で、内耳の炎症によって前庭神経が圧迫されて起こるものです。平衡感覚が麻痺し頭が傾いたり眼球が左右に揺れたりします。同じ方向にぐるぐる回ったりして、うまく歩くことができなくなります。吐き気や食欲の低下も見られます。また、縮瞳や顔面麻痺を併発することもあります。
「多発性筋炎」
 全身の筋肉の痛みがあり、うまく歩くことができず、体を触ると痛がります。咽頭や食道の筋肉も骨格筋からできているので、食事をうまく飲み込めなくなったり、咳き込んで吐いたりすることもあります。原因は免疫介在性、トキソプラズマなどの原虫や細菌の感染などで、全身の骨格筋に炎症が起きた状態です。原因不明の好酸球性筋炎などもあります。
「重症筋無力症」
 筋肉を収縮させるために神経から放出された神経伝達物質(アセチルコリン)を受け取る受容体が機能しなくなり、筋肉の収縮力が低下した状態です。軽いものでは疲れやすかったり歩き方がぎこちない程度ですが、進行すると虚脱状態になって立ち上がれなくななったりします。咽頭や食道の筋肉にこの症状が出ると、食事をうまく飲み込めなくなったり吐き出したりします。
泌尿・生殖器系
ポチくんイラスト(生殖器の病気) 「前立腺肥大」
 老齢の雄犬に見られ、便や尿が出にくくなります。少量の便を何度もしたり、尿もちょっとずつ長い時間かかったりします。若いうちに去勢をしておくことが最も効果的な予防法です。
「包皮炎」
 陰茎との間の包皮腔にブドウ球菌や大腸菌、レンサ球菌などが感染したり、異物が入ったりしたために炎症を起こした状態です。
「膀胱炎」
 犬の泌尿器系疾患の中でも一番多い病気です。尿道炎を併発することが多く、頻繁に尿意をもよおし、また、排尿時に痛みがあります。排尿姿勢をたびたびとりますが、量が少ししか出ません。急性の場合は発熱、嘔吐、下痢、食欲不振、不安、腹部の圧縮が見られます。尿に血や膿、粘膜剥離片などが混ざり、臭いもきつくなります。ほとんどが細菌感染によって起こります。膀胱や尿道結石、膀胱壁の損傷や尿のうっ滞、また妊娠末期、難産時に発症することが多い病気です。
「陰嚢炎・精巣炎」
 陰嚢炎は陰嚢を構成する皮膚組織や精巣周囲組織の炎症です。多くの場合、精巣炎を併発します。打撲や外傷などからの細菌感染が原因です。陰嚢の温度が高くなり、精子ができにくくなります。精巣炎を併発している場合は強い痛みがあり、歩行困難や食欲不振になります。慢性化すると生殖不能になり、治療もできません。
「肛門嚢炎」
 肛門嚢に分泌物がたまると細菌感染や炎症を起こし、袋に穴があいて悪臭や皮膚のかゆみの原因になります。おしりを地面にこすりつけたりしっぽを噛んだりし、悪臭がします。肛門の周囲に穴があいて、膿が出ることもあります。月に1度は定期的に肛門嚢を絞って、分泌物を出してしまって下さい。
「子宮蓄膿症」
 子宮内に膿がたまり、子宮内膜に嚢胞性増殖を伴います。食欲不振、多飲多尿、嘔吐、腹部膨満、陰部から膿が出る(出ないこともあります。)などの症状が見られます。放置すると細菌毒素による尿毒症、腎不全、肝機能不全、敗血症を起こし、死に至ることもあります。
「尿石症」
 マグネシウムやリン酸などの摂取のバランスが悪かったり、飲水量の低下、尿路感染、早期去勢などに加えていろんな要因が関与しています。結石の部位によって、腎結石、尿管結石、尿道結石などがあります。尿の回数が多くなり、血尿が出たりします。尿道に結石が詰まって排尿姿勢をとっても尿が出ない状態になります。放置してしまうと尿毒症を起こし、大変危険です。
「尿毒症」
 腎炎や腎盂腎炎などによって排尿障害を起こし、老廃物の排出ができなくなり、毒素が血中に吸収されてしまったり、尿管や尿道の狭窄または閉塞、膀胱麻痺などによる尿閉によって尿石症になります。乏尿、無尿、嘔吐、痙攣、虚脱などの症状が見られ、治療が遅れれば死に至ります。
「腎不全」
 腎不全には急性と慢性があり、急性の場合はショックや心不全などで腎臓に血液が流れなくなったり、膀胱結石や前立腺肥大、膀胱破裂などで尿が体外に排出されない状態で、急激に腎臓の機能が低下します。尿の量が少なくなったり、全く出なくなったりします。下痢や嘔吐、浮腫、神経症状が見られることもあります。慢性の場合は徐々に腎臓の機能が低下し、多尿多飲になり、だんだん痩せてきます。口がアンモニア臭くなり、食欲不振、嘔吐、下痢が見られることもあります。最後には尿が出なくなり、死に至ります。
伝染病
ポチくんイラスト(恐ろしい伝染病) 「狂犬病」
 “狂犬病ウイルス”を持った犬の唾液を介して、犬や他の哺乳類、人間にも感染します。潜伏期は15〜60日で、全ての神経が侵され呼吸困難を起こします。周囲の音や刺激に過敏になり、なんにでも噛みついたりします。水を見ただけで痙攣を起こし、数日のうちに筋肉が麻痺し、あっというまに死亡します。治療法はなく、直ちに保健所に届け出なければなりません。狂犬病予防法により、犬の飼い主はワクチンを受ける義務があります。
「ジステンパー」
 “ジステンパーウイルス”による病気です。伝染力が強く、排泄物や鼻汁、唾液などを介して感染します。潜伏期間は3〜7日で、高熱が出て鼻汁や咳などの呼吸器症状や嘔吐、下痢などの消化器症状を起こします。その後、脳炎になり痙攣などを起こして死亡することもあります。体内でウイルスを殺すことができず、対処療法しかありません。回復後もてんかんなどの後遺症を残すこともあります。必ずワクチン接種で予防して下さい。
「犬伝染性肝炎」
 “イヌアデノウイルス”によって引き起こされる肝炎です。高熱が続き、腹痛、嘔吐、下痢、皮膚の出血斑などが起こります。角膜炎によって目が白濁する「ブルーアイ」と呼ばれる後遺症もあります。子犬の場合はショック状態になり、1〜2日で死亡することもあります。対処療法しかなく、ワクチン接種による予防が必要です。
「犬レプトスピラ症」
 “レプトスピラ・カニコウライ”と“イクテロヘモラジカ”という菌が原因で、ネズミを介しての感染が多く、犬だけではなく他の動物や人間にも感染します。潜伏期間は4〜10日。高熱が出て嘔吐や血便が見られます。肝臓や腎臓も侵されて黄疸や出血、腎不全を起こします。急性の場合は数日で死に至ることもありますが、ほとんどの場合、症状が出ないまま保菌犬になってしまいます。有効な抗生物質もありますが、ワクチン接種で予防して下さい。
「犬パルボウイルス感染症」
 伝染力の強い“パルボウイルス”によって消化器や心筋などが侵され、死亡率の高い恐ろしい病気です。2〜7日の潜伏期間があり、嘔吐や下痢(血便のこともあります。)が見られます。生後数週間の子犬では、心筋炎を起こし突然死亡することもあります。必ずワクチン接種で予防して下さい。
「ケンネルコーフ」
 伝染性の気管支炎で、複数のウイルスや細菌が複合して起こります。どのウイルスも感染力が強く、気管支の奥に感染し、そこに細菌が加わって呼吸器系の広い範囲が侵されます。「コホコホ」と乾いた咳が出ますが、症状が出てから一週間以内に免疫ができて回復します。ウイルスを殺すことはできないので、ワクチンで予防します。
中毒
ポチくんイラスト(中毒を起こす食べ物など) 「タマネギ中毒」
 タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ類に含まれるアリルプロピルジスルフィドによって、赤血球内のヘモグロビンが酸化され、溶血性貧血を起こしてしまいます。ネギのゆで汁でも発症します。
「メチルキサンキチン中毒」
 チョコレート、カフェイン、コーラなどの摂取で起こります。神経の興奮による舞踏運動、痙攣、多尿などが見られ、大量に摂取した場合は不整脈を起こして死亡することもあります。摂取後1時間以内であれば吐かせます。
「薬剤中毒」
 殺鼠剤や農薬、殺虫剤、ヒ素などの誤飲、またはナフタリン、有機フッ素剤などの薬剤で中毒を起こします。よだれをたらし、嘔吐や痙攣、虚脱や神経症状が見られ、重症の場合は死亡します。ただちに吐かせるか、胃洗浄や浣腸などを行い、できるだけ毒物を排除します。
「その他の中毒物質」
 金属では、鉛、亜鉛、水銀などがあります。植物では、スイセン、ポインセチア、クロッカス、シャクナゲ、クルミ、アロエ、イチジク、キノコ類など。動物では、ヘビ、ヒキガエル、ハチ、クモなどがあります。
犬の健康を守るために
 犬の健康管理のために、飼い主が絶対にしておかなければならないことは、「混合ワクチンの接種」「狂犬病ワクチンの接種」「フィラリアの予防」の3つです。これだけは必ず行って下さい。狂犬病ワクチンは狂犬病予防法により接種が義務づけられています。混合ワクチンにも7種混合や5種混合、3種混合などの種類がありますので、適した接種方法を医師と相談の上、プログラムに添って接種して下さい。当日は激しい運動や入浴などは避け、できるだけ安静にするようこころがけて下さい。
 歯の手入れもやりましょう。「犬に歯磨きなんて」とお考えのかたもいらっしゃるかもしれませんが、歯磨きは歯肉炎などの病気を予防し、歯石がつくのを防ぎます。歯肉炎は細菌感染の原因にもなりますから、しっかり予防して下さい。
 できるだけ良いフードを選んで、正しい食生活をしましょう。健康な体を保つために必要な栄養のバランスは、犬と人間では違います。人間にとってはおいしい食事でも、犬にとっては毒の場合もあります。犬にとって正しい食事とは何かを考え、栄養の偏りによる病気などを予防しましょう。
 そして、定期的な健康診断を受けて下さい。病気は早期発見、早期治療が大切です。早く治療を始めればそれだけ早く治すことが可能になり、また完治できる率も高くなります。治療が遅れれば、それだけ治るのにも時間がかかり、回復しても後遺症が残ったり、また手遅れになったりもします。定期的に病院へ行くことで、犬も病院に慣れ、また、獣医さんにも犬のことをよく知ってもらえ、いざというときの治療にも役立ちます。
 なんといっても大切なのは、飼い主さんが普段から犬の健康状態を知っておくことです。1日どれぐらいの運動量があるのか、睡眠時間はどれぐらいか、どんな表情をしているのか、食事の量、食べ方、尿や便の状態など、毎日ちゃんと犬を見てあげて下さい。全身のボディチェックもしましょう。目、鼻、耳、口、皮膚の状態や毛づやはどうかなど、健康な時の状態を知っていれば、ちょっとした変化にも気づくことができるはずです。犬は自分で「具合が悪い」とか「ここが痛い」とか言うことができないのですから、飼い主さんがいつもしっかり見守っていてあげて下さい。 ポチくんイラスト(きょうも元気!)
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『ポチくんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
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