ポチくんのお部屋
飼い主の責任としつけ
飼い主さんがリ−ダ−です
 犬は飼い主の鏡です。犬を見れば、だいたいその飼い主がどんな人であるかが分かります。きちんとしつけのできている犬の飼い主は、しっかりした責任感のある人でしょう。なので、「うちのイヌはバカ犬で・・」なんて絶対言わないで下さいね。
 犬は本質的には快楽主義者です。飼い主がしっかりしつけをしないかぎり、自分の好きなことしかしません。しかし、社会の中で犬と人間が一緒に生活していくためには、一定のル−ルが必要なのです。それがしつけです。
 犬はもともと群れで暮らす動物ですから、群れのリ−ダ−が必要です。家族の中では、飼い主がリ−ダ−にならなくてはいけんません。ですから、リ−ダ−が誰であるかを分からせることが、しつけの第一歩です。そして、飼い主であるあなた自身がリ−ダ−としての自覚をもって、犬をしっかりリ−ドしてあげなくてはなりません。
リーダーとは?
ポチくんイラスト(飼い主が犬をリードする) 《食事はリーダーが先に食べる》
 群の中では優位なものから食べます。家族が全員食事を済ませてから犬に食事を与えます。
《リーダーが先に出入りする》
 テリトリー(縄張り)の出入りはリーダーが先です。家から出かける時や帰った時、犬は飼い主の後を付いて来させて下さい。安全を確保するためにも重要なことです。
《リーダーがテリトリーを支配する》
 家の中で犬がじゃまな場所に居るならば、そっとどかします。飼い主がよけて通ったりしないこと。群のテリトリーは、リーダーが支配しなければなりません。
《リーダーはかならず勝つ》
 おもちゃで遊ぶときはリーダーが主導権を握ります。おもちゃは飼い主のおもちゃであり、飼い主が管理します。遊びの始めと終わりは飼い主が決めます。
《リーダーは犬と一緒に寝ない》
 犬の社会は縦社会であり、相手が自分より上か下かという認識しかありませんから、“平等”ということは理解しません。同じ部屋で寝るのはかまいませんが、ベッドに上げるのはやめましょう。
《リーダーは我慢強い》
 犬に対して感情的になってはいけません。我慢強く、そして一貫した態度で臨んで下さい。
《リーダーは優しい》
 犬が命令に従ったときは、笑顔で誉めてあげましょう。優しくお手入れもしてあげて、犬をよく観察し、異常があれば速やかに対処してあげましょう。毅然とした態度と優しい笑顔が、頼りになるリーダーの基本です。
居場所を決める
 しつけは子犬がやって来たその日から始まります。慣れない場所に初めて来た子犬は、不安になって鳴くかもしれません。しかし、その時に「かわいそう」といって抱いたりすると、犬は「鳴けば抱っこしてもらえる」と学習してしまうのです。そうなると、抱っこしてと鳴き続けるようになってしまいます。犬の思いのままにさせていると、犬は自分がリ−ダ−であると勘違いしてしまい、人の言う事を全く聞かない問題犬になってしまいます。
 まず初めに、犬の居場所を決めてあげます。ケ−ジやサ−クルを用意して、そこを犬のお部屋に決めます。決して一緒のお布団やベッドで寝たりしてはいけません。犬は犬、人間は人間の区別が必要です。出かける時は、犬をケ−ジやサ−クルに入れて、黙って何気なく出かけて下さい。「行ってくるからね」などと声をかけないほうがいいのです。帰った時は、どんなに犬が喜んで大騒ぎしても、それにかまってはいけません。犬が落ち着くまで待って、ケ−ジやサ−クルから出してあげて下さい。
遊び
 犬は遊びの中で学習していきます。ですから、遊びの時間は大切なしつけの時間でもあります。じゃれてるうちに手や足、服などを噛んできたら、毅然とした態度で叱って下さい。犬をおなかの上に乗せて遊ぶのはやめましょう。犬の方が上位に立つことになってしまいます。
  一番ありがちなことは、おもちゃを犬に与えっぱなしにすることですが、おもちゃも必ず飼い主が管理して下さい。遊ぶ時間は一回30分程度で、終わったらおもちゃも取り上げて、かたずづけてしまって下さい。遊んでいいものと悪いものの区別をきっちりつけましょう。
散歩
 散歩に出かける時も、飼い主がリ−ダ−としての役目をしっかりと果たして下さい。部屋を出る時、家を出る時は、必ずリ−ダ−が先に出ます。犬に引っ張られて散歩しているようではリ−ダ−としては失格です。初めは犬のペ−スに合わせながら、徐々に犬が飼い主の左側にちゃんとついてくるように練習して下さい。
 外では何が起こるか分かりません。他人の迷惑にならないためにも、突発的な事故から犬を守るためにも、リ−ドは必要不可欠です。
食事
 群れの中では、順位が上のものから食事をします。したがって、家族の中では犬が一番後です。人間が食べているものを欲しがっても与えてはいけません。一度与えてしまうと、生涯人間の食べ物を欲しがる犬になってしまいます。
  犬に食事をさせる時は、「オスワリ」をさせて、「ヨシ」という合図で食べるようにします。残したものはすぐに下げて下さい。
トイレ
 子犬のトイレのしつけは、サ−クルを用意して子犬の居場所を決めてあげた上で、最初はサ−クル内全体に新聞紙などを敷いて、どこでしてもいいようにしておきます。次第に子犬自身が好んでする位置が決まってきますから、そこにトイレの位置を決めます。その位置を避けて寝る場所や遊ぶ場所を作ります。一度トイレの場所を決めたら、絶対に動かさないこと。動かしてしまうとトイレの場所を覚えられません。
 子犬はだいたい起きた直後や食事の後に排便、排尿をしたがることが多いので、そわそわし始めたり、クンクンと床の匂いを嗅いだり、グルグルと回り始めたら、すぐにトイレに連れて行きます。上手にできたら誉めてあげましょう。少しづつ自由に動ける範囲を広げて、失敗しなくなったら成功です。
 トイレのしつけは子犬がやって来たその日から始めて下さい。そして気長に根気強く、覚えるまで続けて下さい。完全に覚えるまでは、失敗したからといって叱ってはいけません。排泄すること自体が悪いことだと思ってしまうと、がまんしたあげく、見ていない時や飼い主に隠れてするようになってしまいます。
 トイレを覚えた後にもかかわらず他の場所でした時は、現行犯の時のみ叱っても有効です。時間がたってしまってからは、叱るのはあきらめて、臭いが完全にとれるまで消臭剤などを使って拭き取ります。また、トイレは常に清潔にしておいて下さい。汚れたトイレは、犬だってイヤなんです。
室内飼いのすすめ
 今の日本の現状では、犬を外に繋ぎっぱなしで飼っている人も多いのですが、できるだけ室内で飼ってあげて下さい。犬は群れで暮らす動物ですから、ひとりぼっちにされるのはとってもつらいことなんです。せめて夜だけでも室内に入れてあげて下さい。
 どうしても外でしか飼えないのなら、散歩に行ったり一緒に遊ぶなどして、できるだけたくさんの触れ合いの時間を作ってあげて下さいね。それができないのならば、犬を飼うのはあきらめましょう。
ポチくんイラスト(外でひとりぼっちは寂しい)
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トレーニング
 しつけは飼い主であるあなたがリ−ダ−としての責任を果たすということです。しつけの失敗は犬の責任ではなく飼い主の責任です。しつけに当たって大切なことは、まず、絶対に暴力をふるわないこと。感情的にならないこと。そして、一貫性を持ってしつけること。(そのためには家族全員の合意が必要です。)気長に根気強くやること。毎日やることです。トレ−ニングの時間は一回30分までで、食事の前に行います。
ほめる
 しつけの上で大切なのは、「ほめる」ことと「叱る」ことです。ですから、何の意味もなく「イイコイイコ」と頭をなでたりすると、せっかくのご褒美としての「ほめる」の効果がなくなってしまいます。「イイコイイコ」は犬がほめられるべき行為をした時に限りましょう。ご褒美のおやつも同様です。
叱る
 叱る」ということは意外に難しいものです。たとえば何かを壊した時、その直後5秒以内でなければ、叱っても犬はなぜ叱られたのか理解できません。叱るのは現行犯の時のみ有効です。ただ、甲高い声で叱るのではなく、毅然とした態度で低く「イケナイ」と言って下さい。
 それでもやめなかったり、反抗的な態度をとるようであれば、ひっくり返しておなかを上にさせて押さえ込んだり、10分くらい犬をひとりにして無視します。
 または、小石やビ−玉などを入れて、大きな音がするようにした空き缶を投げて、脅かします。この時、飼い主は自分が投げたことを犬に気付かれないようにして下さい。「これをやったら何か嫌なことがある」ということを覚えれば、飼い主がいない時でもやらなくなります。
 「叱る」といっても決して暴力をふるってたたいたりしてはいけません。「叱る」ことと、感情的になって「怒る」こととはまったく違うことです。愛情を持って、冷静に「叱る」ように心がけて下さい。
基本のコマンド5つ
 犬のしつけで重要な基本の5つのコマンドをご紹介します。1、「オスワリ」(スワレ)2、「マテ」3、「フセ」4、「オイデ(コイ)」5、「ヒ−ル(ツケ)」の5つです。この5つさえマスタ−してしまえば、たいていのことはOKです。よく言われる「お手」は、しつけのコマンドではなく、一種の“芸”ですから、必ずしも覚える必要はありません。
ポチくんイラスト(基本のコマンドを覚えよう) 「オスワリ(スワレ)」
 犬は何かを期待している時は、自然に座ります。音の出るおもちゃやボ−ルで犬の興味を引き、それを犬の目とあなたの目の延長線上に持っていきます。目と目が合ったら(これを『アイ・コンタクト』と言います。)「オスワリ」と言って座らせ、ちゃんと座ったらおもちゃをあげます。今度は「チョウダイ」と言っておもちゃを取り上げます。おもちゃを離さない時は、下顎を押さえて口を開かせておもちゃを素早く取り上げます。おもちゃを離したら笑顔で誉めることも忘れないで下さい。これを繰り返して「オスワリ」と「チョウダイ」を覚えさせます。
 今度はおもちゃではなく、人差し指を立てて、犬の目とあなたの目の延長線上に持っていき、アイ・コンタクトをして「オスワリ」と言います。ちゃんと座ったらご褒美をあげましょう。飼い主の声による命令と、手の合図の両方を覚えてもらいます。
 「オスワリ」を覚えたら、今度はそのまま待つことを教えます。リ−ドを付けて「オスワリ」をさせたら、犬の前にしゃがんでリ−ドを地面と平行に短く持ち、ツンツンと少し引いてみます。犬が立ち上がろうとしたら、すぐに「オスワリ」と言って座らせます。徐々にリ−ドを長くして距離を延ばして、引っ張る力も強くしていきます。こうして「オスワリ」のまま、動かないということを覚えさせます。
「マテ」
 「マテ」も「オスワリ」と同じように犬を座らせて、片手を前に出し、指をそろえて手のひらを犬のほうに向け、「マテ」と言いながら2、3歩離れます。犬が立ち上がったらすぐにまた座らせます。10秒くらいそのままで待っていられたらご褒美をあげ、徐々に離れる距離と時間を延ばしていき、飼い主の姿が見えなくなっても、そのままでいられるようにします。
 次に「マテ」と合図して、犬の回りを一周します。犬がそのまま動かないでいられたらご褒美をあげます。犬の回りを何回も回ったり、わざと大袈裟な動きで回ったり、犬をまたいだりしても動かないでいられるようになるまで、繰り返し練習して下さい。
 「オスワリ」や「マテ」は、食事の時にも練習します。食事の前には必ず「オスワリ」をさせ、「マテ」でそのまま待たせ、「ヨシ」と言ってから食べるようにします。
ポチくんイラスト(「マテ」で座って待つ)
ポチくんイラスト(「フセ」のポーズ) 「フセ」
 犬は普段から「フセ」のポ−ズをとっていることがありますから、その時に「フセ」と言いながら背中をナデナデしてあげましょう。
  次に犬を自分の左側に座らせ、右手にご褒美を持って下に降ろして「フセ」と言います。犬が姿勢を低くして「フセ」の姿勢になったらご褒美をあげます。
 今度は左足でトンネルを作り、ご褒美を見せながら「フセ」の姿勢でくぐらせます。「フセ」の姿勢にならない時は、右手で犬の前足を引いて左手で背中を押さえ、「フセ」の姿勢をとらせます。
「オイデ(コイ)」
 まずは食事のたびに「オイデ」と言って犬を呼びます。呼ばれて来たらごはんをあげます。両手を広げて「オイデ」と命令し、来たらご褒美をあげます。大切なことは、「オイデ」と呼ばれて行けば、犬にとって必ずいいことがあるということです。ですから、犬が嫌なことをする時は、「オイデ」と言ってはいけません。
「ヒ−ル(ツケ)」
 「ヒ−ル」というのは人間のかかとの位置のことです。飼い主と一緒に歩く時、立ち止まる時、犬はいつでも人間の左側でヒ−ルポジションをとらなければいけません。歩きながら犬の名前を呼んで、ご褒美やおもちゃで犬の気を引き、「ヒ−ル」と言って自分の左太ももをパンと叩きます。アイ・コンタクトができ、犬がヒ−ルの位置に来たらご褒美をあげます。(歩きながらやります。)これを犬の集中力が切れる直前まで続けます。
 これによって犬は常に飼い主の顔を見ながら歩くようになり、自然に「ヒ−ル」の位置を保って歩くようになります。立ち止まっている時も、同じように「ヒ−ル」の合図で飼い主の左側に付いて座るようにします。
ポチくんイラスト(「ヒール」の位置)
ポチくんイラスト(「ヒール」の位置を保って歩く)
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問題行動
 犬の問題行動にもいろいろありますが、肝心なのは、早期発見早期治療です。成犬になってからの矯正は難しくなることもありますから、できるだけ子犬の時期に解決しておきましょう。子犬だからといって甘く考えていると、犬がオトナになってから、手に負えなくなってしまいます。飼い主のあなたがリ−ダ−としての自覚と責任を持って、犬を正しくリ−ドしてあげて下さい。
犬の問題行動は飼い主の責任
 ちょっとした物音で、激しく吠えるとか、留守番中に物を壊すなど、飼い主にとっては困った問題でしょう。しかし、どんな問題行動も犬が悪いわけではなく、全て飼い主の責任です。多くの場合、犬の本能的な行為であったり、人間の対応が間違っていたり、なんらかの原因があるはずです。犬の気持ちを全く理解しようとしないで、すべてを犬のせいにしてしまうのは、あまりにも人間の身勝手ではないでしょうか? 問題行動の原因を確かめ、正しいしつけを行えば、必ず犬は答えてくれるはずです。
「かみつく」
 しつこいようですが、しつけは子犬がやって来たその日から始まります。「子犬だから」「かわいいから」と、したい放題にさせてしまうと、あとあと困ったことになってしまいます。たいていの子犬は何にでも噛みつきます。これは犬の本能でもありますが、ほおっておくとオトナになっても癖になってしまいますから、子犬の時期にしっかりやめさせる必要があります。
 まず、退屈させないために犬用のガムなどを与えます。古いタオルや靴などは、犬は古いものか新しいものかの区別はできませんので、やめておいたほうがいいでしょう。手足を噛んできた時はきちんと叱り、絶対にやめさせます。「甘がみ」は愛情の表現ではありますが、甘がみかそうでないかを区別するのはけっこう難しいので、「かみつく」という行為については、やめさせるのが無難です。
「吠える」
 吠えるということも、犬にとっては本能的な行為です。しかし、だからといって好き勝手に吠える犬は、社会生活をする上では迷惑です。子犬が吠えるのは、たいてい何かを要求している時です。しかし、吠えるからといってその要求に答えてしまうと犬は「吠えれば聞いてくれる」と思ってしまい、要求が聞き入れられるまで吠え続けるようになってしまうのです。最初に「吠えても無駄」と分からせることが大切。聞かないと言ったら絶対に聞かないという一貫した態度で臨みましょう。
「飛び付く」
 子犬の時であれば、犬に飛び付いて来られても、「かわいい」で済みますが、犬がおとなになった時にはどうでしょう? ましてや犬の嫌いな人に飛び付いてしまったら・・。飼い主のあなたが全ての責任を負わなくてはなりません。子犬の時は、飛び付こうとして立ち上がったら後ろ足を払って倒します。おとなの犬なら、飛び付いてきた前足をつかんで犬が嫌がるまでそのままにします。
 また、犬が飛び付こうとしたらその場を立ち去って10分くらい無視します。犬の所に戻って飛び付かなかったら誉めてあげます。
問題の原因は?
 問題の原因は様々で、10頭10色です。生まれてから今まで犬に起こった出来事を思い出しながら、犬の略歴を作ってみましょう。そこから原因を分析してみます。まず、問題行動が起こったのはいつからでしょう? 子犬の頃から? それとも最近? 子犬の頃からであれば、それに対してあなたが正しく対処してこなかったことが原因です。対処してきたつもりでも、何かが間違っていたのかもしれません。最近になって始まったとしたら、その頃に何か変わったことはなかったでしょうか? ちょっとした環境の変化が原因であったりしますから、しっかり思い出してみて下さい。
 次に、問題行動を起こすのは、何時ごろでしょう? もし、だいたい決まった時間があるのなら、そこから原因をつきとめられるかもしれません。また、時間は決まっていなくても、ある一定の条件、たとえば留守番をさせた時とか、来客があった時などに問題を起こすとか、ある場所に限って問題を起こす、あるいは特定の人がいる時に問題を起こすのであれば、そこからも原因を探ることができます。
なんでそうなるの?
 ある程度原因が分かったら、犬がなぜそんな行動をするのかを考えてみましょう。そのひとつに「転移」ということがあります。これは犬が動揺したり不安をいだいている時に起こります。たとえば、留守番でひとりぼっちにされた時、家具などを壊してしまったりします。それは不安をまぎらわそうとしてとる行動なのです。
 何かに対して「恐怖」を感じていることもあります。その場合は、何に対して恐怖を感じているのかを知ることが肝心です。たとえば雷やオ−トバイなどの大きな音だったりしますが、その音がした時に起こった別のことが原因で、その音に反応するようになってしまうこともあります。
 「神経症」ということも考えられます。特に神経質な犬の場合は、飼い主はできるだけおおらかな気持ちで受け止めてあげて下さい。「不安神経症」の犬は環境の変化を極端に嫌います。ちょっと家具を移動しただけでも不安になって鳴き叫んだりもします。また、あまりにも早い時期に、母犬や兄弟たちと離されてしまったことによって、心に傷を持っている犬もいます。これらの神経症の場合は専門のカウンセラ−などにご相談されたほうがよいかもしれません。ただ、面倒だからと問題を回避してしまうようなことのないよう、最後まで責任を持って対応して下さい。
 犬の問題行動で、一番考えなければならないのは、「アルファシンドロ−ム」です。「アルファ」とは、群れのリ−ダ−という意味です。犬が家族の中で自分がリ−ダ−だと思ってしまった場合に起こります。自分が一番上位にあると思っているわけですから、飼い主であろうとも、気に入らないことがあれば、威嚇をしたり、噛んだり飛び付いたりします。
 毎日のちょっとしたことが、「アルファシンドロ−ム」の要因になってしまいますから、子犬の頃からきちんとしたしつけをし、飼い主がリ−ダ−であり、犬は一番下位であることを分からせておかなければなりません。「かわいそう」と言って甘やかしていると、おとなの犬になってから手に負えなくなり、本当にかわいそうなことになってしまいます。
ポチくんイラスト(犬がリーダーになってしまう)
問題の解決に向けて
 原因が分かれば、それに対応する正しい訓練を行えば、必ず問題行動は治ります。気長に時間をかけて、犬と一緒にがんばって治していきましょう。それにより、いっそう犬との関係が深くなり、かけがえのない信頼関係ができるのです。

「アルファシンドロ−ムへの対処」
 犬がアルファとなってしまった場合の対処にあたっては、家族全員の理解と協力が必要です。そして、「明日から始めよう」と決めてできるものではなく、飼い主に対して、たとえば「かむ」という行動をとった瞬間から始めなければなりません。
 まず、最初の2週間は、家族全員が犬を無視します。名前を呼んだり触ったり、目を合わせることもダメです。排泄のために外に連れ出すのはかまいませんが、散歩はしません。食べ物や水は与えます。そうするうちに、徐々に犬に変化が起こります。飼い主について歩いたり、下痢をしたり、関心を引こうとイタズラしたり‥‥。そういった変化が見られ、ちょっとかわいそうと思っても、そのまま2〜3日は無視を続けて下さい。変化が見られない場合でも、2週間をめどにします。
 第2段階として、「スワレ」や「フセ」などを命じ、それができたら少しだけ撫でてあげます。食事を与えたり、散歩に出る前には必ず何か命令して、できたら誉めるという簡単な訓練を、毎日5分くらいずつ行うようにしましょう。
 これは群れからの愛情を遮断して、自分が一番優位であるという考えを犬に改めてもらう方法なのですが、まれに自立心の強い犬には効果のないこともあります。その場合は専門のカウンセラーにご相談下さい。

「転移行動の矯正」
 転移行動の代表的なものは、留守番の時の破壊行動です。このような問題行動をする犬は、少し甘やかされて育った犬が多いようです。出かける時に「行って来るね」などと声をかけるのは、かえって逆効果ですから、黙ってさっさと出かけるようにしましょう。
 目標を決めて少しづつ、時間をかけて慣らしていきます。最初は10分くらい犬を家に残して外に出てみます。その間、おとなしくしていたらご褒美をあげます。次の日は20分、また次の日は30分、また次の日は1時間と、徐々に時間を延ばしていきます。ビデオなどをセットして、様子が分かるようにしておきます。2時間で暴れ始めたら、次の日は1時間半に時間を短くして、また始めます。
 この訓練で大切なのは、たとえ犬が鳴いても暴れても、絶対に途中で家に戻ってはいけないということです。「鳴いたら飼い主が戻って来る」と思ってしまうからです。「鳴いてもダメ」ということを徹底させて下さい。かじられて困るものはかたずづけておいて、犬用のガムなどを置いておきましょう。家具などをかじる時は、しつけ用のスプレ−などの犬の嫌いな臭いを付けて、近付かないようにしておきます。犬を叱るのは必ず現行犯でなければダメです。外から帰って叱っても、犬にはなぜ叱られるのかが分からないので、全く無意味なのです。
ポチくんイラスト(雷への恐怖心) 「恐怖心の克服」
 犬が恐怖をいだく対象はさまざまです。雷を怖がるといっても、大きな音に恐怖を感じたことが原因で、雷に反応するようになることもあります。また、雷に驚いて起こした行動に対して、その時に飼い主から暴力などを受けた経験が、問題行動の原因となっていることもあります。
 怖がる音を録音し、小さい音で聞かせます。問題行動を起こさなければ誉めてあげます。徐々に音を大きくしていき、少しづつ慣らしていきます。

「条件付け」
 来客に吠える犬などの場合は、まず「オスワリ」を覚えさせ、座ったらご褒美をもらえるという習慣をつけます。次に、来客があった時に「オスワリ」を命じて、できたらご褒美をあげます。来客があるたびにそれを繰り返し、お客様が来れば、犬が座って待つようになるまで続けます。
「天罰」
 家具やスリッパを噛んだり、テーブルの食べ物を盗ろうとしたり、道を歩く人に吠えたり、飼い主に対して反抗するという行動ではない場合には、飼い主が直接叱るよりも、“天罰”を与えるほうが効果のある場合もあります。こういった行動は、犬が悪いことをしている自覚が全くないので、直接叱っても、飼い主が見ていなければ、またやるかもしれないからです。また、飼い主の気を引こうとしてやっている場合もあります。
 テーブルの食べ物を盗ろうとした瞬間に、小石やビー玉を入れて大きな音が出るようにした空き缶などを犬の近くに投げ、犬を脅かします。この時、飼い主が投げたとわからないように、できるだけ知らんぷりしておいて下さい。「これをやったら嫌なことが起きた」と犬に覚えてもらうためです。
 噛んで困る物には、嫌な臭いや味のするスプレーをかけておきます。それを噛んで嫌な味がしたことを覚えれば、噛まなくなります。
飼い主も一緒に
 犬の問題行動の原因は様々です。原因の見極めを誤り、間違った矯正法をとってしまうと、犬にとってストレスが溜まる一方になってしまいます。犬だけを問題にするのではなく、飼い主ご自身のありかたについても、一緒に見つめ直してみましょう。
 また、犬の気持ちを少しでも理解していくために、「犬ってなぁに?」の項の「犬の言葉」も参考にして下さい。
ポチくんイラスト(一緒に歩いて行こう)
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『ポチくんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
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